現在、三鷹市美術ギャラリーでは、年に1度の恒例企画、
“三鷹市美術ギャラリー収蔵作品展Ⅲ”が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
2020年よりスタートしたこの収蔵作品展も、今回で3回目。
時代や国籍、ジャンルに分けて作品を紹介するのではなく。
作家名の五十音順に紹介するという、
ありそうでなかったスタイルのコレクション展です。
全5回で開催される予定であるものの、
昨年の第Ⅱ期で紹介できたのは、瑛九まで。
あ行をまだ抜けられていませんでしたが、
今展では、芸術家で映画監督の大浦信行さんにはじまり、
高松市高松町生まれの人気画家・高松明日香さんまでを紹介。
一気に、た行まで進むことができました。
果たして、あと2回で五十音を完走できるのか?
今後のペース配分が気になるところです。
と、それはさておき。
靉嘔(あいおう)さんしか紹介できなかった第Ⅰ期、
前後期に分け10人の作家を取り上げた第Ⅱ期と比べ、
今回の第Ⅲ期は、前後期で計26人の作家が紹介されていました。
それらの作家の中には、戦後を代表する前衛画家オノサト・トシノブや、
何も演奏しない時間が4分33秒続く曲、
『4分33秒』でお馴染みの前衛作曲家ジョン・ケージ、
洋画界の第一線で活躍し続ける絹谷幸二さん、
絵本界の奇才と呼ばれるスズキコージさんも名を連ねています。
他にも、草間彌生さんや駒井哲郎、清宮質文の作品も。
時代も国籍も作風も違うさまざまな作家の作品があり、なおかつ、
知る人ぞ知る作家からメジャーどころの作家も取り揃えられています。
いい意味で、普通のコレクション展でした。
これだけの作品群を無料で観られるのも嬉しいところ。
三鷹方面を訪れる機会があれば、
途中下車して観ておきたい展覧会です。
なお、紹介されていた作家の中で、
個人的に胸アツだったのが、髙島野十郎です。
家族も持たず、画壇とも一切関わることなく、
85年の生涯をひっそりと終えた“孤高の画家”髙島野十郎。
近年、メディアで取り上げられる機会が増え、
人気が上がっているものの、あまりまとまった形で作品を目にする機会はありません。
実は、意外にも、7点収蔵されているそうで、
会場のラストで、それらが一挙展示されていました。
ちなみに、ろうそくの絵を多く描いたことから、
彼は“ろうそくの画家”との異名も持っています。
もちろん収蔵品の中にもろうそくをモチーフとした絵がありました。
炎には催眠効果があるといいますが。
まさに、それ。
実際には絵なので、揺らめいていないはずなのですが、
ジーッと見つめていると、ちろちろと炎が揺らめいているように思えてきました。
そして、なぜか目が離せなくなります。
そのタイミングで、もし悪い催眠術師が現れて(?)、
耳元で何か暗示を掛けられたら、確実に従ってしまうことでしょう。
また、珍しいところでは、岡田紅陽の作品も紹介されていました。
岡田紅陽はそ生涯にわたって、富士山を撮り続けた写真家です。
もし、彼の名を知らない、作品を観た記憶がない、という方でも。
彼が撮った富士山の写真は、毎日のように目にしているはずです。
それが、こちら↓
旧五千円札と現在の千円札に使われている逆さ富士。
あの写真(《湖畔の春》)を撮影したのが、岡田紅陽その人です。
人生で何十回何百回と目にしてきた写真だけに、
実物を目にした瞬間には、テレビの大スターと遭遇したかのような気分になりました。
ちなみに。
その後半生を三鷹で過ごしたという縁から、館内には、
期間限定で「太宰治展示室 三鷹の此の小さい家」が開設されています。
そちらでは、今年寄贈されたばかりの太宰治による肖像画が初公開されていました。
描かれているモデルが誰なのかは、
今のところ、わかっていないそうです。
ちなみに、太宰による肖像画は他にも数点出展されています。
こちらの肖像画のタイトルは、《クラサキサン》とありました。
ただ、名前は判明しているものの、
“クラサキサン”が何者なのかはよくわかっていないそうです。
何はともあれ。
色遣いはバスキアを彷彿とさせるものがあります。
太宰治は文学だけでなく、
画家としての才能もあったようです。