国内外で活躍する現代アーティスト、小松美羽さん。
その関東圏の公立美術館では初となる個展が、
現在、川崎市岡本太郎美術館で開催されています。
タイトルは、“小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ”。
岡本太郎と小松美羽さん。
特に接点がない2人のように思えますが、
ともに、神秘や霊的なモノが根底にあるアーティスト。
さらに、全身全霊をぶつける制作スタイルも共通しています。
さてさて、展覧会の冒頭で紹介されているのは、
小松美羽さんが初期に制作していた銅版画の数々。
指や筆を使って一心不乱に描くスタイルでお馴染みの小松さんですが。
意外や意外、芸術家としてのキャリアは、
今とは真逆の繊細な版画作品からスタートしていました。
その時代の代表作が、こちらの《四十九日》。
ダークでポップでファンタジー。
そんな独特の世界観が、繊細に描き込まれています。
『約束のネバーランド』をどことなく彷彿とさせるものがありました。
しかし、2011年にNYに赴いたことで、
この路線から大きく変化することになります。
アートの本場NYでは、版画は所詮「print」でしかなく、
一点モノの絵画作品ほどに評価されることはなかったのだそうです。
そこで、彼女は一念発起し、《四十九日》の原版を切断。
さらに、2013年に訪れた出雲大社で、
本殿から雲を割って天に伸びる虹色の光を見た衝撃から、
自身の表現に色彩を取り入れるようになりました。
展覧会には、その翌年2014年に、
出雲大社へ奉納した《新・風土記》も特別に出展されています。
一度奉納された作品が 一般公開されることは異例中の異例。
小松さん本人たっての希望により、
特例で借用、公開が実現したそうです。
ちなみに、作品の一部にひと際光るものが!
霊的な何やらかと思いきや、
本物のダイヤモンドとのこと。
それは光っているわけですよね。
なお、特別公開と言えば、こちらの作品も。
真言宗立教開宗1200年を記念して、
東寺こと教王護国寺の依頼で制作された《ネクストマンダラ―大調和》です。
約4m×4mの超大作。
こちらは表装後、来年に東寺に奉納されるとのこと。
本展でその前に、特別に初公開されています。
なお、この令和版曼陀羅ともいうべき、
《ネクストマンダラ―大調和》が披露されている展示室は、
まるで演劇の舞台のような雰囲気、照明となっていました。
従来の美術館のイメージとは、ガラッと変貌を遂げています。
良くも悪くも、岡本太郎感は皆無です。
が、しかし、この空間の中央に、
岡本太郎の《混沌》が設置されていました。
ただ、よく見ると、その周囲を黒曜石が取り囲んでいます。
これらは、小松さんの故郷、長野県産の黒曜石。
彼女曰く、縄文文化と関係が深い黒曜石で、
太郎さんを尊敬しつつ感謝を込めながら、その作品を封印したのだとか。
こんなことをしてしまって、
太郎さんが気を悪くしないか、若干心配になりました(笑)
さてさて、展覧会では他にも、
個人蔵を含む貴重な作品が多数展示されています。
平面だけでなく、立体作品もあれば、
近年描かれた最新シリーズも展示されていました。
さらに、岡本太郎の《明日の神話》に、
インスタレーションを受けて描いたという描きおろし作品も。
なお、会場を出て、最後に展示されていたのは展覧会開幕の前日に、
岡本太郎の《母の塔》の前でライブペインティングで描かれた作品でした。
こちらは、なんと下描き一切なしで、
たったの1時間で描かれたものだそうです。
ちなみに。
この汚れに汚れた床や衣装も、
そのライブペインティングの産物とのこと。
たった1時間で、こんなにも汚れてしまうものなのですね。。。
小松さんに部屋や服を貸す方は、十分にご注意くださいませ(←?)
ちなみにちなみに。
そのライブペインティングの横に、
意味深な感じで、太郎さんのパネルが設置されていました。
・・・・・・・・完全にメンチ切ってますよね。
挑まれたし、作品を封印されたし。
相当、腹に据えかねるものがあるのかもしれません。
ともに、独自の世界観を持ち、
エネルギー溢れる作品を描く小松美羽さんと岡本太郎。
しかし、見比べてみると、その違いが浮き彫りになります。
霊性を感じる小松作品に対し、パッションが宿る岡本太郎作品。
まさに、“霊性と情熱のあいだ”です。
小松美羽展と併せて、是非、太郎さんの常設展もお楽しみください。