現在、東京都写真美術館で開催されているのは、
“アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真”という展覧会です。
1930年代から40年代にかけて、全国各地で同時多発的に、
アマチュア写真団体を中心に、空前の前衛写真ムーブメントが起こりました。
このムーブメントは、活動の時期があまりにも短かかったため、
これまで美術界で検証されたことは、ほとんどありませんでしたが、
ここ最近、研究が進み、ひそかに注目を集めているそうです。
海外の展覧会でも作品が紹介される機会が増えているとかいないとか。
そんな日本の前衛写真をフォーカスした展覧会です。
まず、会場の冒頭で紹介されていたのは、
日本の写真界に大きな衝撃を与えることとなった、
同時代の海外の作家による作品の数々。
ダダイストでシュルレアリストでもあったマン・レイや、
夜のパリを撮ったことで知られるブラッサイらの写真が紹介されています。
それらの中には、職業写真家としてパリの街並みを撮り続け、
その最晩年にシュルレアリストの芸術家たちから注目を浴びたウジェーヌ・アジェの作品も。
こちらはそのうちの1枚、《日食の間》。
日食の様子を食い入るように見つめる人々が映し出されています。
今も昔も、天体ショーは人の心を捉えているのですね。
とはいえ、何よりも気になるのが、人々の密集っぷり。
もっとバラけて見ればいいのに。
と、それはさておき。
展覧会は全5章で構成されています。
第2章からは、地域別に前衛写真を紹介されていました
トップバッターは、前衛写真がもっとも熱かった大阪です。
こちらでは、1937年開催の“海外超現実主義展”から強い影響を受け、
「アヴァンギャルド造影集団」を結成した平井輝七、本庄光郎らの作品が紹介されていました。
インパクトの強い写真作品が多々ありましたが、
中でもやっぱりもっともインパクトがあったのが、小石清のこちらの作品です。
タイトルは、《疲労感》。
そう言われたら、もうそういう風にしか見えないです。
疲れっぷりが尋常ではありません。
グロンサンを今すぐ飲む必要がありそうです。
小石清によるインパクト大の写真は他にも。
《象と鳩》です。
ヨレッヨレの象。
見ているだけで、なんか泣けてきました。
子どもの頃に教科書で読んだ『かなしいぞう』よりも、悲しみを覚えました。
さてさて、展覧会では続いて、
名古屋、福岡の作家たちが紹介されています。
そして、東京都写真美術館の展覧会だけに、
ラストは東京の作家の前衛写真で締めくくられていました。
日本の前衛写真。
とても興味深いテーマではありましたし、
個人的にはシュルレアリスムは好きなのですが。
正直なことを言えば、こんなにたくさん観るものじゃなかったなァと(笑)
全員が全員、シュルレアリスムな作風であるため、
個性が見えず、誰が誰なのかイマイチわからなかったです。
ブームが短かったのも、納得。
それはその後、それぞれ自分なりの表現を探っていくわけですね。
ちなみに。
出展作品の中に1枚、疑惑の写真がありました。
永田一脩の《題不詳(手)》という作品です。
手相がマッキー的なモノでなぞられています。
島田秀平の手相占いを彷彿とさせる写真作品です。
この写真が目に飛び込んできた瞬間、
“あれ?どこかで見たような・・・”と、デジャヴを感じました。
考えること数分、その正体を思い出しました。
「あっ!展覧会の冒頭で観たんだ!」
こちらは、マン・レイの《映画『ひとで』より》。
手相も指輪の位置も完全に一致しています。
たまたま似てしまった・・・・・わけではありますまい。
最後に紹介したいのも、インパクトの強い一枚。
ハナヤ勘兵衛の《ナンデェ!!》です。
どういう状況ナンデェ!?
何が何でも2次会の会場に付いていく。
そんな必死さを感じます。