現在、国立新美術館で開催されているのは、
“ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション”という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
ドイツ第4の都市であるケルン市が運営する美術館、
ルートヴィヒ美術館のコレクションから選りすぐりの名品が来日したものです。
日本ではあまり知られていない美術館ではありますが、
そのコレクションの質は高く、美術界では一目置かれています。
例えば、ピカソのコレクション。
世界で3本の指に入るコレクションとして知られています。
実は、この美術館に作品を寄贈し、
館名にもなっているペーター・ルートヴィヒは、
大学で美術史を学び、1950年にピカソで博士号を取った人物。
それゆえ、ピカソを観る眼は確か。
今展には、その中から珠玉の8点のピカソが来日しています。
(注:大人の事情で画像は紹介できませんが)
また、例えば、ポップ・アートコレクション。
ペーター・ルートヴィヒとその妻イレーネは、
ドイツではいち早く、同時代のポップ・アートをコレクションしていました。
彼らはポップ・アートの作家とも直接交流があり、
ペーターはウォーホルの肖像画のモデルにもなったほど。
今展には、その肖像画を含むポップ・アートの名品の数々が来日しています。
(注:やはり大人の事情で画像は紹介できませんが)
他にも、シュルレアリスムのコレクション、
抽象表現主義のコレクション、現代アートのコレクションが充実。
これらのコレクションも展覧会で紹介されています。
(注:またまた大人の事情で画像は紹介できませんが)
・・・・・・と、見せられないものばかり紹介するのもなんなので。
ここからは、画像で見せられる作品群をご紹介いたしましょう。
まずは、ロシア・アヴァンギャルドのコレクション。
今展では、それらの優品がまとまって来日しています。
ルートヴィヒ美術館 東京会場 会場風景
中でも注目したいのは、マレーヴィチの《スプレムス 38番》。
カジミール・マレーヴィチ 《スプレムス 38番》 1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01294.
(Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d033965_01)
色とりどりの矩形(1コだけ三角形)が、
実に絶妙なバランスで配置されています。
絶対主義を表す「スプレムス=シュプレマティズム」を名乗るだけに、
この配置以外ありえないのだろうなァ、という絶対的な説得力がありました。
ちなみに、よく見ると、もっとも手前(?)にある3つの矩形、
画面上でももっとも目立つ大きな3つの矩形の色は、黄・黒・赤でした。
ドイツの国旗カラー。
ドイツ人が買うなら、それは絶対にこの1枚に決まっています。
また、ロシア・アヴァンギャルドといえば、
ロトチェンコの写真群も素晴らしかったです。
左)アレクサンドル・ロトチェンコ《電線》 1928年
右)アレクサンドル・ロトチェンコ《水への跳躍》 1932年(プリント:1932年以降)
センスがキレッキレでした!
もしも、ロトチェンコが、
インスタのある現在に生きていたら、
間違いなく、インフルエンサーになっていたことでしょう。
アレクサンドル・ロトチェンコ《ライカを持つ少女》 1934年(プリント:1934年以降)
ゼラチン・シルバー・プリント 40.0 × 29.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, Sammlung Fotographie ML/F 1978/1072.
(Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c009362)
特に《ライカを持つ少女》の構図なんて、
あまりにも神がかっていて震えるレベルでした。
デジカメやスマホではなく、フィルムカメラで、
これらの写真が撮れていることに、さらに驚きです。
ちなみに、写真といえば、
ルートヴィヒ美術館の写真コレクションは、
写真史を網羅する質、量ともに優れたコレクションとしても知られています。
ルートヴィヒ美術館 東京会場 会場風景
数ある写真の中で、個人的に印象に残っているのは、
ドイツのフリードリヒ・ザイデンシュテュッカーによる1枚です(画面左)。
左)フリードリヒ・ザイデンシュテュッカー《水たまりを飛び越える女》 1925年(プリント:1979年)
右)アウグスト・ザンダー《菓子職人》 1929年(プリント:1960年頃)
タイトルは、《水たまりを飛び越える女》とのこと。
・・・・・・いや、どう見ても、飛び越えられてないでしょ。
この1.5秒後に、確実に「パシャン!」ってなってます。
何も無理矢理この水たまりを渡らなくても、
ぐるっと迂回すれば、濡れなくて済むでしょうに。
何かしらの「ことわざカルタ」の絵札のような1枚です。
さてさて、展覧会ではもちろん、
カンディンスキーやヴォルスをはじめ、
ワシリー・カンディンスキー《白いストローク》 1920年 油彩/カンヴァス 98.0 × 80.0cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 10003.
(Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d056273_01)
ヴォルス《タペストリー》 1949年 油彩/カンヴァス 54.0 × 73.0cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01167.
(Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, Peter Kunz, rba_d032855_01)
ドイツにゆかりのある作家の作品も充実していました。
個性的な作風の作家が多く、フランスやスペインなど、
他のヨーロッパ諸国とは、また一風違った作品を楽しむことができます。
ルートヴィヒ美術館 東京会場 会場風景
ここ近年、〇〇美術館展といった、
海外から作品が来日する大型美術館展の出展数は、
60、70点あたりがデフォルトになってきましたが。
今回のルートヴィヒ美術館展の出品数は、なんと144点!
ジャンルも多岐に渡っているので、
2、3コ分の展覧会を観たかのような気分になりました。
体力と時間には余裕をもって訪れることをオススメいたします!
┃会期:2022年6月29日(水)~9月26日(月)
┃会場:国立新美術館 企画展示室2E