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ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode

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現在、三菱一号館美術館で開催されているのは、

“ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode”という展覧会。

 

 

 

20世紀で最も影響力の大きい女性デザイナー、

ガブリエル・シャネルの日本では実に32年ぶりとなる回顧展です。

ちなみに、愛称である“ココ”・シャネルではなく、

ガブリエル・シャネルという本名が展覧会名になっているのは、

彼女の人生ではなく、デザイナーの仕事に焦点を当てたからとのこと。

クリエイターとしてのガブリエル・シャネルの神髄に迫る展覧会です。

 

出展数は、実に147点。

ガリエラ宮パリ市立モード美術館所蔵のものを中心に、

20年代から最後のコレクションまでが紹介されています。

 

展覧会を通じて、何よりも唸らされるのが、

彼女がいかにファッション界に大きな革命を起こしていたかということ。

それも、何度も。

 

例えば、黒のドレス。

 

ガブリエル・シャネル ドレス 1936-37年秋冬

蝋引きしたレーヨンのクロッケ パリ、パトリモアンヌ・シャネル©Julien T. Hamon

 

 

彼女がデビューした1920年代は、

色鮮やかで装飾の多いファッションが台頭し始めた時代でした。

そんな風潮の中で、さまざまな状況に合わせやすく、

シンプルでエレガントという理由で、彼女はあえて黒をチョイスしたのです。

この当時は、「黒い衣装=喪服」であり、

黒のドレスは賛否量を巻き起こしたそうですが、

シャネルはブレることなく、黒のドレスを発表し続けました。

今でこそ、珍しくもなんともない黒のドレス。

しかし、逆に言えば、それだけ世の中に浸透したということ。

そう考えると、いかにシャネルの功績が大きかったかがわかります。

 

また、エレガントかつ機能的、

実用的であるデザインを追求したシャネルは、

他にも、従来の常識を覆すアイテムを次々に生み出しています。

それまで下着に使われていたジャージや、

男性のファッションにしか使われなかったツイードといった、

これまで女性のファッションに使用されなかった素材を積極的に取り入れたり。

単色が当たり前だった女性の靴を、バイカラーにしてみたり。

 

シャネルのクリエイション、マサロ製作 バイカラー・シューズの原型 1960-1962年頃 

子山羊革、絹サテン パリ、パトリモアンヌ・シャネル ©Julien T. Hamon

 

 

シャネルの代名詞ともいうべき、

シャネルN°5もその代表例の一つです。

 

ガブリエル・シャネル 香水「シャネル N°5」 1921年

ガラス、木綿糸、封蝋、紙 パリ、パトリモアンヌ・シャネル©Julien T. Hamon

 

 

当時の香水は、何か特定の香りというのが当たり前でした。

しかし、彼女は、抽象的な香りにこだわり、

80種類以上の成分をブレンドした複雑な香りを採用したのです。

その成分の一つとして使われているのが、合成香料アルデヒド。

そう、実は、このシャネルN°5は、

世界で初めて合成香料を使用した画期的な香水でもあるのです。

また、画期的と言えば、このボトルも。

ラリックの装飾的な香水瓶が人気を博していた時代に、

シャネルは、あえてシンプルで直線的なラインをした四角いボトルを選んだそう。

ちなみに、抽象的な「N°5」という名前は、

試作品のガラスの小瓶に付いていた番号が5番だった、という説もあるのだとか。

謎めいた香水だからこそ、今なお人々を引き付けているのかもしれませんね。

 

 

さてさて、1920年代に華々しくデビューしたガブリエル・シャネル。

その後も、順風満帆なデザイナー人生を送っていたかと思いきや、

戦後まもなくして、完全にファッション界の第一線から退いたそうです。

そんな彼女がカムバックを果たすのは14年後のこと。

以来、87歳で亡くなるまで、現役を貫きました。

 

なお、カムバックした時のシャネルは、71歳。

さすがに、かつてほどの輝きは無いだろうと思えば、

いやいや、まったくもって、そんなことはありませんでした。

シャネルの代名詞ともいうべきテーラード・スーツや、

2・55バッグは、この頃に発表されたものなのだそうです。

 

ガブリエル・シャネル テーラードのジャケット、スカート、ブラウスとベルト 1965年

春夏 ウールツイードと絹シェニール、手彩色のガラリット、絹ガーゼ パリ、ガリエラ宮©Julien T. Hamon

 

ガブリエル・シャネル 「2.55」バッグ 1955-1971年 

羊革のキルティング、メタル、回転式の留め具 パリ、パトリモアンヌ・シャネル©Julien T. Hamon

 

 

才能は全然枯れていませんでした。

いや、むしろ、さらに輝きが増していました。

 

 

シャネルが生み出すファッションには、

すべて哲学があり、美学が貫かれていました。

それゆえに、一過性のブームで終わらず

最終的には、一つのスタンダードとなっていったのでしょう。

また、ただ感性で作られているのではなく、

その細部のデザインにいたるまで、ちゃんと理由がありました。

そういう意味では、ファッションとしての美はもちろん、

プロダクトデザインとしての美しさ、機能美がありました。

シャネル好きの女性だけでなく、

シャネルに興味がなかった男性にもオススメの展覧会です。

星星

 

 

ちなみに。

画像がなくて恐縮ですが、

黒一色で統一された会場デザインも必見です。

普段の美術館の展示室とは、

ガラッと大きく印象が変わっていました。

シャネルならではの哲学なのでしょう。

展示室内の暖炉はすべて隠されていました。

 

 

 

 

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