東京都庭園美術館で開催中の展覧会、
“蜷川実花「瞬く光の庭」”に行ってきました。
東京都庭園美術館といえば、
言わずと知れたアールデコの館。
日本を代表するアールデコ建築です。
一方、蜷川実花さんといえば、
国内外で活躍するフォトグラファーにして、映画監督。
2000年に木村伊兵衛賞を受賞して以来、
第一線で活躍し続けるカリスマ的アーティストです。
その特徴は何と言っても、ヴィヴィッドな色遣い。
「蜷川カラー」とも呼ばれる独自の色彩感覚を存分に発揮しています。
と、それだけに。
東京都庭園美術館の空間と、
蜷川実花さんの色彩が、果たしてマッチするのか。
一抹の・・・・・いや、十抹くらいの不安を抱えていました。
庭美の内部が、渋谷パルコみたいな空間になっていたらどうしましょう(←?)。
が、しかし!
結論から言えば、それはまったくの杞憂に終わりました。
アールデコの邸宅内に彼女の写真が、
まったく違和感なく、調和していました。
強いていえば、蜷川さんの写真が、
そっと寄り添っているかのような印象。
写真作品が展示されているというよりも、
邸宅内に花や植物が活けてあるかのような印象を受けました。
なんでも、今回出展されているのは、
2021年以降に撮影された最新作とのこと。
そのほとんどが初公開作品です。
中には、東京都庭園美術館の庭で撮影されたものもあるとのこと。
代名詞ともいえる“極彩色”の作風とは違って、
ここ最近は光に包まれた“光彩色(こうさいしょく)”に惹かれているという蜷川さん。
光に溢れたその光景は、
どこか夢や想像の世界のよう。
極彩色の写真が映し出す光景は、完全なる蜷川ワールドで、
蜷川さんの蜷川さんによる蜷川さんのための写真という感もありましたが。
光彩色の写真が映し出す光景は、蜷川さんのイメージでもあると同時に、
僕もどこかで見たことがあるような、遠い記憶の中にあるような感があります。
さらにいえば、このアールデコの館が、
その長い歴史の中で目にした、建物の記憶のようにも思えてきました。
その人気の高さゆえ、彼女の展覧会は、
毎年、日本各地どこかしらで開催されているので、
「また蜷川実花展かァ」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
これまでとは、いい意味で一線を画す蜷川実花展でした。
ちなみに。
新館では、富山県美術館での展覧会で初披露された・・・・・
映像インスタレーション作品が、
東京都庭園美術館ver.で展示されています。
タイトルは、《胡蝶の夢》。
半透明の大きなスクリーンが重なる空間を、
奥へ奥へと進んで行くと、ひと際強い光を放つ画面へと辿り着きます。
特に誘導されたわけではないのですが、
自分を含めた観客全員が、この奥の大画面へと、
引き寄せられるように、歩を進めていました。
まるで、誘蛾灯のよう。
胡蝶というよりも、蛾の気分を味わえました。