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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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名和晃平 生成する表皮

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5年以上ぶりに十和田市現代美術館に行ってきました。

 

 

 

外観こそそんなに変わっていませんでしたが。

若干、あくまで若干ですが、入り口にいるマスコットキャラ、

チェ・ジョンファによる《フラワー・ホース》の色がくすんでいました。

 

 

 

まぁ、前回訪れてから5年以上、

自然光に浴び続けていたら、そうなりますよね。

 

あと、リンゴのタワーのような作品が誕生していました。

こちらは、鈴木康弘さんによる《はじまりの果実》という作品。

期間限定で設置されているとのことです。

 

他にも、5年ぶりに訪れたところ、

新作の常設作品が増えていました。

例えば、塩田千春さんの《水の記憶》

 

 

 

塩田千春さんといえば、森美術館で、

2019年に開催された大規模展が記憶に新しいところですが。

あの時に披露されたインスタレーション作品よりも、

こちらの作品に使われている赤い糸のほうが、太いのだそう。

それゆえ、より鮮烈な色合いで、力強い印象を受けました。

ちなみに、空間の中央にある船は、

実際に、十和田湖で見つけたものなのだとか

 

 

 

まるで、この作品のために作られたかのような。

絶妙な具合で、空間に溶け込んでいました。

 

 

それから、新たに加わった常設作品の中には、

レアンドロ・エルリッヒの《建物―ブエノスアイレス》も。

 

 

 

森美術館でのレアンドロ・エルリッヒ展でも、

同様の作品が展示され、インスタ映えすると話題となりましたが、

こちらはそのブエノスアイレスの街並みver.です。

窓枠などの建具は、実際にブエノスアイレスで使われていたものとのこと。

 

 

 

なお、あまりにも巨大な作品ゆえ、

この作品のためだけに、こちらの建物を増築したそうです。

 

 

 

《建物》のために、建物を1軒作ってしまうだなんて。

十和田市現代美術館の本気ぶりが、伝わってきました。

 

そうそう、建物と言えば、こちらも。

 

 

 

一見すると、ただの空き家ですが、

その一部をよく見てみると、ものすごい違和感が・・・。

 

 

 

まるで、建物をスポッと貫通するように、

ホワイトキューブの空間が埋め込まれて(?)います。

こちらは、目[mé]による作品《space》です。

作品でもありながら、展示空間でもあり。

現在は、この展示空間と美術館の一部、街中を使って、

若手作家による展覧会“大岩雄典 渦中のP”が開催されています。

 

 

 

めちゃくちゃ面白い展覧会なのですが、

とても一口で説明できる展覧会ではないので、泣く泣く割愛。

あえてヒントを出すなら、『ビンカン選手権』を地で行くような展覧会です。

 

 

さてさて、そんな十和田市現代美術館では、

現在、“名和晃平 生成する表皮”も開催中。

世界的に活躍する彫刻家・名和晃平さんの最新個展です。

 

 


会場の冒頭に展示されていたのは、

本展のために制作された最新作《Biomatrix(W)》

 

 

 

パッと見は、駄菓子屋で売ってるスーパーボールのくじのようですが。

その正体は、真珠のような輝きを放つシリコーンオイル。

この溶液の下には、一定の間隔でエアポンプが設置されており、

そこから空気が送り込まれることで、ポコっと泡が生まれては、消えていきます。

 

 

 

なお、グリッド状に見えているものは、

ポコっと生まれた泡同士が混ざることがないため、

泡と泡の間にできた境目なのだそう。

シリコーンオイルに一定の間隔で、

一定のタイミングで空気を送ることで、

無数の正円と正方形という幾何学模様が生まれる。

もはや神の采配にも似たような作品でした。

 

なお、この《Biomatrix(W)》の魅力を、

最大限に引き出すために、展示空間は最大限にシンプルに。

 

 

 

立って鑑賞するだけでなく、座っても鑑賞できるよう、

展示室全体を埋め尽くす白い床を施工したのだそうです。

生物をどこか思わせるシリコーンオイルの不思議な動きは、

一度観始めたら、ずっと見続けてしまう謎の中毒性がありました。

「絶対に次の展示室にも行くんだ!」

そういう強い意志を持ったうえで、鑑賞されることをオススメいたします。

星星

 

 

さてさて、続く小さな展示スペースで展示されていたのは、

名和さんが院生時代に制作していたドローイングシリーズ「Esquisse」です。

 

 

 

コロナ禍で、実家を整理している際に見つけたものとのこと。

ただ、本能の赴くままに、描いたドローイング作品ではなく。

一般的な画材を、一般的に使わないで描いてみたり、

割りばしや習字の朱墨といった素材でドローイングしてみたり。

一貫して、素材の新しいあり方を模索をする、

名和さんの原点が垣間見える作品シリーズでした。

 

最後の展示室で紹介されていたのは、

最新シリーズとなる「White Code」の作品群。

 

 

 

粘度のある白い絵の具を滴らせるその下を、

キャンバスを一定の速度で何度か通過させることで完成する作品です。

 

 

 

キャンバスの上に落ちた絵具の粒(セル)は、

等間隔で並ぶ点となったり、繋がることで線になったり。

筆を使って描いた絵画作品ではなく、

絵具の粒(セル)を用いた彫刻作品といえましょう。

 

 

ちなみに。

紹介されていた作品の中には、

点がランダムに滴っていたものもありました。

 

 

 

その表面をじっと観ていたら、

こういうタイプの煎餅(=雪の宿)を思い出しました。

 

 

 


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