2020年に、青森県弘前市に開館した、
弘前れんが倉庫美術館に行ってきました。
2年前にオープンしたとは思えないほど、
建物からは、すでに貫禄が漂っています。
それもそのはず。
この建物はもともと、明治・大正期に建設されたシードル工場で、
その後しばらくは、政府米の保管庫としても活用されていました。
弘前市民に愛されたこの建物は、
その姿をなるべく留める形で改修され、
ミュージアムとして新たな人生を歩むこととなったのです。
ちなみに。
改修を担当したのは、新進気鋭の建築家・田根剛さん。
世界で活躍する田根さんの日本で初めて手がける美術館建築です。
外観こそ、個性は抑えめですが、
エントランスの内部は、なかなかに個性的。
まるで、外側から内側に向けて、
大きな力でレンガ壁が押し込まれたようになっています。
ちなみに、レンガの積み方も、なかなかに個性的。
この建物のために考案された新しい積み方だそうです。
その名も、弘前積み。
また、下からでは見づらいですが、
建物の上部はチタン製の屋根で覆われています。
個性的なこの色は、シードルをイメージしたとのこと。
その名も、シードル・ゴールド。
一昔前のケータイ電話のカラーみたいなネーミングです。
ちなみに。
隣接しているこちらの煉瓦倉庫は、
カフェ・ショップ棟として改修された建物。
建物の中には、おそらく日本の美術館では唯一、
世界的にも珍しいシードル工房が併設されています。
この工房では、美術館オリジナルのシードルが醸造されており、
ショップコーナーで、県内で醸造されたシードルとともに販売されていました。
シードルの品揃えが、これほど充実しているのは、
まず間違いなく、日本全国の美術館でここだけでしょう。
と、シードルに目移りしてしまいましたが、ここからは肝心のアートの情報を。
美術館の入り口を入ると、まずは、
弘前出身の国際的アーティスト、奈良美智さんの作品がお出迎え。
青森県立美術館のアイコンともいうべき、
《あおもり犬》にちょっと似ている《A to Z Memorial Dog》です。
さらに、その先には、ジャン=ミシェル・オトニエルによるガラス彫刻作品も。
タイトルは、《エデンの結び目》。
色合いがリンゴのようだと思っていたら、
まさに、リンゴから着想を得て制作されたものとのこと。
上からしっかりと吊り下げられているので、
万有引力によって、落下する心配はないそうです。
安心して、下から見上げてご鑑賞くださいませ。
さてさて、そんな弘前れんが倉庫美術館で、
この春・夏に開催されているのが、“池田亮司展”。
国際的に活躍するアーティストで、
作曲家でもある池田亮司さんの国内では、
実に13年ぶりとなる大規模な回顧展です。
出展作品は、新作近作を含む全8点。
それらの作品が、かつて倉庫だった空間内に点在しています。
鑑賞者は会場内を巡りながら、
それらの作品が放つ音や映像を、
全身で浴びるような形で体感することに。
展覧会というよりも、さながら音楽フェスのよう。
許されるのであれば、シードル片手に巡りたいくらいでした。
(注:展示室内での飲食は禁止。飲酒はもってのほかです!)
中でも圧巻だったのが、吹き抜け空間で展示されていた《data-verse 3》。
国内初展示となる映像作品です。
こちらは、NASAをはじめとする様々な科学機関によって、
ネット上で一般に公開されたデータを加工、編集して構成したもの。
単なるデータが、池田さんの手にかかると、
とんでもなくクールでカッコいい映像作品に大変身!
防犯カメラの映像さえも、
めちゃめちゃクールでした。
素材として使われているデータが、
実際のところ、何のデータなのかは、
作品を観ているだけではわかりません。
それゆえに、映像作品として、
何か意味があるというわけではないのでしょう。
意味はないけど、ただただカッコいい。
そういうタイプのアート作品です。
なので、いくら画像と言葉を使っても、
池田さんの作品の魅力は伝わらないことでしょう。
こればかりは体験して頂かなければ!
音と光の競演による心躍る体験。
この夏、ねぷたまつりと併せて、
楽しんでみるのはいかがでしょうか。