日本最大級、いや、アジア最大級のダリ美術館である。
それが、福島県裏磐梯にある諸橋近代美術館(通称)、モロ美です。
そんなモロ美で、この夏から秋にかけて開催されるのが、
“コレクションをめぐる6つの部屋 ルームス”という展覧会。
美術館の6人のキュレーターが部屋の住人となり、
コレクションをそれぞれのテーマで紹介するという展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
まず、最初のルームがこちら↓
この部屋の住人は、
諸橋近代美術館の現館長。
父で創設者の諸橋廷蔵氏のエピソードを中心に、
コレクションが収蔵されたいきさつが紹介されています。
モロ美を代表するコレクションの数々が、
コレクターの目線で語られているのが、なんとも新鮮。
個人的には、ダリ以外のコレクションに関するエピソードが興味深かったです。
諸橋近代美術館は、ダリだけじゃない!
そんな住人(=館長)の心の叫びが聞こえてくるようでした。
・・・・・とはいっても。
やはりモロ美のファンにとっては、
ダリ欲を満たして欲しいのもまた事実。
続いてのルームでは、思う存分にダリを満喫することができます。
というのも、この部屋の住人は、
ダリマニアを自称するあの学芸員。
『そろそろ美術の話を…』にも出演してくれた大野さんです。
この部屋では、モロ美を代表するダリ作品とともに、
ダリマニアならではのつぶやきも紹介されていました。
「いいね」ボタンが、ハートではなく、
ヒゲになっているのが、心憎い限りです。
ROOM3のテーマは、「語らい」。
対話型鑑賞を担当する学芸員が住人だけあって、
鑑賞者が参加できる仕掛けが多々用意されていました。
実際に、声を出すわけではないですが、
住人や他の鑑賞者とおしゃべりしているような、
そんな気分になれる楽しい部屋です。
そのお隣ルーム4の住人は、
作品保存が担当の学芸員さん。
それゆえ、これまで展覧会を担当したことはなかったそうです。
そんな学芸員さんがテーマに選んだのは、
作品を保存する上で重要なポイントとなる「材質」。
作品に使われている顔料の実物を展示したり。
油彩と水彩を並べて展示することで、
作品に当てる照明の照度が違うことを比較してみせたり。
知っているようで意外と知らない材質について、
専門家の視点から、わかりやすく紹介しています。
これが展覧会デビューとは思えない、興味深い展示でした。
ルーム4の住人の今後に期待です。
ルーム5のテーマは、「プロセス」。
モロ美のダリコレクションの一番の特徴は、
ダリの立体作品が多く含まれていることにあります。
ダリの立体作品は、実に複雑な構造なため、
展示するたびに組み立て直しているのもあるのだとか。
当然、僕ら鑑賞者が目にするのは、
組み立て終わった後の完成形の姿です。
今展ではあえて、その途中のプロセス(工程)状態の姿で展示。
さらに、組み立てていく様子の動画も紹介されていました。
ダリ版『何を作っているのでしょうか?』(出展:クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!)。
映像を観ている際、僕の脳内では、
『カルメン前奏曲』が再生されていました。
さて、展覧会のラストを飾る最後の部屋は、
良い子の皆様にはちょっと刺激が強いお部屋。
「スキャンダル」がテーマの部屋です。
部屋の入り口にあったのは、この部屋に作品が飾られている画家、
ゴッホ、ユトリロ、スーチンの3人の㊙エピソードが掲載されたスキャンダラス新聞。
これを読んでから彼らの作品を観ると、
その印象がガラッと変わるかもしれません。
さらに、ダリのコレクションの中から、
アダルトな作風のものも展示されていました。
これまでさまざまな美術館で、たくさんのコレクション展を観てきましたが、
複数の切り口でオムニバス形式で見せるのは新鮮で、純粋に面白かったです。
個人的には、モロ美の歴代の展覧会の中でベストの展覧会でした!
音声ガイドに、僕を起用したという点も含めて(笑)、
モロ美のチャレンジ精神に大きな拍手を送りたいと思います。
いつかは一度訪れてみたい諸橋近代美術館。
この展覧会の開催期間に訪れることを、心よりオススメいたします!
ちなみに。
展覧会と同じくらいに、いや、それ以上に(?)、
オリジナルグッズの制作に力を入れているモロ美。
その最新グッズとして、ダリラベルのシードルが販売されていました。
ふくしま逢瀬ワイナリーで作られているシードルとのこと。
このシードルをショップで販売するために、
ちゃんと酒類小売業免許を取得したそうですよ。