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水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―

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毎日、暑い日が続きますね。

こんな時に是非訪れたいのが、

現在、山種美術館で開催中の展覧会。

“水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―”です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

テーマはズバリ「水」。

山種美術館が所蔵する作品の中から、

歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》や、

 

歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》 1857(安政4)年 大判錦絵 山種美術館 (注:前期展示7/9~8/14)

 

 

奥村土牛の代表作の一つ《鳴門》

 

 奥村土牛《鳴門》 1959(昭和34)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

国際的に活躍する日本画家・千住博さんの《ウォーターフォール》といった、

 

千住博《ウォーターフォール》 1995(平成7)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

水が描かれた名品の数々を紹介する、

目にも涼しげ、体感温度も涼しげな展覧会です。

 

 

 

さてさて、今展では、テーマを「水」に絞ったおかげで、

これまであまり展示される機会がなかった作品も出展されていました。

例えば、石田武による《鳴門海峡》

 

 

 

こちらは、奥村土牛の《鳴門》にインスパイアされ、

それに挑むつもりで描かれたという幅4mの大作です。

その大きさゆえ、展示される機会になかなか恵まれず。

実に16年ぶりの公開だそうです。

 

 

また、日本画の殿堂というイメージの強い山種美術館ですが。

実は、コレクションには洋画作品も含まれており、

今展では、その中から石川響の《東海日月》が展示されていました。

 

 

 

初めて目にする作品ですが、

純粋に色が美しく、一目で惹きつけられました。

ちなみに、こちらの《東海日月》は17年ぶりの公開とのこと。

展示の機会が多い他の山種コレクションと、

比べてしまうと、だいぶ水をあけられた感はありますが。

今回を機にブレイクするかもしれません。

 

なお、洋画といえば、こちらの作品も。

 

 

 

作者は、“日本洋画界のドン”黒田清輝です。

画面の左側の人物たちは、

腰や肩のあたりまで海に浸かっています。

ところが、画面右の人物たちは、

ひざ下までしか浸かっていません。

画面の真ん中あたりを境に、海の深さが違っているようです。

描かれている人物たちが、そこに違和感を覚えてない様子がなんともシュール。

観続けていると、じわじわシュールに思える作品です。

 

 

さて、話は変わりまして。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』やアニメ『平家物語』など、

ここ最近、源平の世界を描いた物語が注目を集めています。

それにちなんで、現在、山種美術館では、

“日本画に描かれた源平の世界”という特集展示も同時開催中。

源義経と藤原秀衡を描いた安田靫彦の《平泉の義経》をはじめ、

 

安田靫彦《平泉の義経》 1965(昭和40)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

源平の物語をモチーフにした作品の数々を紹介するものです。

それらの中には、江戸時代に描かれた《源平合戦図》も。

 

 

 

よく見ると、八艘飛びする義経の姿も描き込まれていました。

 

 

 

八艘飛びする、というか、

八艘飛びする直前の姿でしたね。

できれば、華麗に飛んでいる姿を描いて欲しかったものです。

 

 

ちなみに。

こちらの特集展示の出展作品の中で、

特に印象に残ったのが、冷泉為恭の《小督仲国図》

 

 

 

小督(こごう)は、宮中一の美女で琴の名手。

高倉天皇に寵愛されたことで、平清盛に疎まれてしまいます。

身を案じた彼女は、嵯峨野に隠棲しました。

そんな小督のもとを源仲国が訪ねた『平家物語』の一場面が描かれています。

何よりも気になったのは、小督の大きさです。

 

 

 

手前のおばあさん(?)と比べると、その大きさは歴然。

そんな小督に対して、建物は小さめな気がします。

犬小屋のようです。

 

 

 


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