現在、ポーラミュージアムアネックスでは、
“野口哲哉「this is not a samurai」”が開催中。
デビュー以来、一貫して鎧兜をモチーフにした作品を発表し続ける、
人気現代美術家・野口哲哉さんの4年ぶりとなる大々的な個展です。
野口さんの立体作品の魅力は、
なんといっても、その人間臭い表情にあります。
一般的に、鎧武者と聞くと、凛々しい表情を思い浮かべますが。
野口さんが作り出す鎧武者には、凛々しいのは一人もいません(笑)
凛々しいどころか、めちゃくちゃ落ち込んでるヤツもいます。
絶望感がハンパないですね・・・。
彼は一体何をやらかしてしまったのでしょう?
また、中には公園の遊具で遊んでいる侍もいました。
特に楽しそうで無いところが、妙にリアルです。
侍が現代にタイムスリップしてきた。
そんな設定はドラマや映画などでは珍しくないですが。
この侍もそういう感じで、タイムスリップしてきたのかもしれませんね。
で、とりあえず、公園で途方に暮れているみたいな。
立体作品の完成度の高さもさることながら、
野口さんは、平面作品でもその才能をいかんなく発揮しています。
その象徴ともいえるのが、こちらの《CAT WALK》という作品。
猫耳付きの兜を身に付けた猫好きのサムライが、
猫用の鎧を身に付けた猫を散歩する姿を描いた一枚です。
あまりにも完成度が高いゆえに、
この絵を戦国時代に描かれたものだと勘違いした人が、
猫好きの侍がいたとTwitterで呟き、瞬く間にバズってしまったことがあったそう。
確かに、野口さんを知らない人が観たら、騙されてしまうかも。
本展には他にも、地球を仰ぎ見る侍を描いた作品や、
パルミジャニーノの《凸面鏡の自画像》をモチーフにした作品もありました。
中でも印象的だったのが、
ジョルジュ・ド・ラトゥール風のシリーズです。
ただし、ラトゥールはろうそくの光を描いていますが、
野口さんのシリーズでは、スマホの光が描かれています。
中世風の絵画×鎧武者×スマホ。
情報過多でわちゃわちゃしそうなものですが、
不思議と調和していたのが、何より印象的でした。
ちなみに。
展覧会では、野口さんの最新作も紹介されています。
アルネ・ヤコブセンの名作椅子エッグチェアに座る侍たち。
初めて体験する座り心地に、
いささか緊張気味のようでござる。
また、ポーラミュージアムアネックスならではの作品も。
ハートマークを一生懸命に描く侍。
よく見ると、描いているものは、
赤い絵の具を付けた筆や赤いペンでなく・・・・・
口紅です。
それも、オルビスの。
そして、こちらもポーラ会場ならではの作品です。
男性が着ている小袖の紋様が、
ポーラのビジュアルイメージPOLA Dotsになっています。
普通に考えたら、違和感しかないはずなのに、
違和感が仕事をしない、とは、まさにこのことです。