兵庫県西脇市が生んだ現代美術界のスーパースター横尾忠則さんから、
作品を寄贈・寄託されたのを機に、2012年に開館した横尾忠則現代美術館。
村野藤吾が建築を設計した兵庫県立近代美術館改め、
兵庫県立美術館王子分館の西館をリニューアルする形でオープンした美術館ゆえ、
外観こそは、そこまで横尾忠則さんのイメージはありませんが。
ひとたび中に足を踏み入れれば、横尾忠則ワールド全開!
横尾忠則グッズしか売ってないミュージアムショップがあったり、
横尾さんの個人コレクションを紹介するギャラリーがあったり、
横尾さん自身がデザインしたフォトスポット、通称「目玉廊下」があったり。
そうそう。
フォトスポットといえば、美術館の最上階に
昨年2021年に誕生したばかりの最新フォトスポットも。
こちらの空間の窓から眺められるのが、
横尾さん夫妻が新婚時代を過ごしたという青谷町(当時)の街並みです。
この景色を不定形のミラーに反射させ、取り入れつつ、
さらに、コラージュ写真を組み込んだのが、こちらのフォトスポット↓
その名も、キュミラズム・トゥ・アオタニです。
どれが本物の景色で、どれが写真で、どれが鏡像なのか。
感覚がバグってしまうこと請け合いの新感覚のフォトスポットでした。
ちなみに。
これだけ横尾忠則ワールド全開の美術館ならば、
併設されたカフェも、「ピンクガール」とか「Y字路」とか、
横尾さんに関係ある名前が付いているはず!
と、思いきや・・・・・・・
予想を大きく裏切って、「ぱんだかふぇ」。
おそらく、ほど近くにある神戸市立王子動物園に、
ジャイアントパンダがいることから命名されたものと思われます。
なお、店名こそ、横尾さん感はないですが、
提供されている食器は、すべて横尾さんデザインのものなのだそうです。
さてさて。
そんな横尾忠則現代美術館は、今年でめでたく開館10周年目。
それを記念して開催されているのが、
“横尾さんのパレット”という展覧会です。
横尾さんの作品の特徴にして、
魅力でもあるのが、鮮やかな色遣い。
そんな横尾さんの作品における色に注目し、
作品を色ごとに分類することで、展示室をパレットに見立てた展覧会です。
色に着目するという試み自体は、
もしかしたら、そこまで目新しくないかもしれませんが。
そこは、横尾イズムが染み込んだ横尾忠則現代美術館。
まるでインスタレーション作品のように、展示室全体を使って、
徹底的にやり切ってしまっているのが、なんとも印象的でした。
これはもう間違いなく、ここでしかできない展覧会です。
ただでさえ、パワーに溢れた横尾作品が、
同系色で集まることで、色のパワーも加わり、増幅していました。
ちょっとした夏バテくらいなら、
吹き飛ばしてしまうほどのパワー。
元気になれる、いや、元気にならざるをえない展覧会です。
なお、タイトルに、“横尾さんのパレット”とありますが、
横尾さんが実際に使っているパレットも一部展示されていました。
その正体は、パレットとしては意外で、
でも、日常ではよく目にするものなのですが、
一体、何だと思いますか?
正解は、こちら↓
パーティーやお花見などで使う紙皿です。
横尾さんは1枚の作品を描く際に、1枚の紙皿を使うのだそう。
作品の数だけ、パレット(紙皿)があるのですね。
つまり、このパレットと対応する作品は、
同じ色を同じような割合で使っているということなのだそうです。
いつかパレットと作品を使って、
神経衰弱みたいなゲームをしてみたいものですね(←?)
ちなみに。
展覧会では、赤や青、黄色や緑だけでなく、
黒をモチーフにした作品だけを集めたコーナーもありました。
想像していたよりも、黒くて、
しかも、照明もあえて落としてあるので、
しばらく目が慣れるまで、何も見えなかったです。
この光景が飛び込んできた瞬間、
思わず目を白黒させてしまいました。