米沢市上杉博物館に行ってきました。
こちらは、「なせばなる」の格言でお馴染みの米沢藩主、
上杉鷹山に関する資料を中心に、上杉家や米沢に関する展示を行うミュージアムです。
そんな米沢市上杉博物館でこの夏開催されているのが、
“日本画をたのしもう-高精細複製が語る名品の世界-”という展覧会。
綴プロジェクトで制作された高精細複製品から,
選りすぐりの24点を展示し、日本画の魅力に迫る展覧会です。
綴プロジェクトとは、京都文化協会とキャノンが、
共催して推進している社会貢献活動プロジェクトで、
2007年より、日本の文化財の高精細複製品を制作し続けています。
その綴プロジェクトの第一号として制作されたのが、何を隠そう、
米沢市上杉博物館が所蔵する国宝の《上杉本洛中洛外図屏風》だったのでした。
ちなみに。
高精細複製品と聞いて、
「なぁんだ、レプリカなのかぁ・・・。」と、
ガッカリした方もいらっしゃることでしょう。
いやいや、ただの複製画ではありません!
高精細複製画です。
本プロジェクトのために開発された和紙や絹本の上に、
オリジナル文化財の微妙な色合いや質感を寸分たがわず再現。
さらに、作品によって、上から本物の箔を貼っています。
素人目にはまったく見分けがつかないレベル。
学芸員や研究員でも、ガラスケース越しでは、
本物との違いを見極められないレベルだそうです。
そんな実物と何ら遜色ない高精細複製画を、
ガラスケースに入れず、むき出しで展示できるのは、
この綴プロジェクトの展覧会ならでは。
行燈をイメージした照明で下から直接照らすことができるのも、この展覧会ならではです。
展覧会は全3章で構成されています。
まず第1章では、《上杉本洛中洛外図屏風》にちなんで、
狩野永徳ならびに狩野派に関する作品の数々をご紹介。
それらの中には、狩野探幽門下四天王の筆頭とまで目されるも、
生没年や生涯もよくわかっていない“謎すぎる絵師”久隅守景の国宝 《納涼図屏風》や、
狩野派最大のライバルであった長谷川等伯の《松林図屏風》、
狩野派の多くが江戸へと拠点を移した後、
京都で一大勢力を築いた円山応挙の《雪松図屏風》もありました。
続く第2章では、琳派がテーマ。
コレクションは一切門外不出で知られる、
フリーア美術館が所蔵する尾形光琳の《群鶴図屏風》や、
仁和寺にある俵屋宗達の《風神雷神図屏風》も展示されています。
そんな俵屋宗達の《風神雷神図屏風》の向かいには、
尾形光琳がトレースし、完成させたとされる《風神雷神図屏風》も。
そして、その裏側には、光琳を私淑した酒井抱一が、
リスペクトを込めて描いた《夏秋草図屏風》もありました。
実際の作品は、作品保護の観点から、
光琳と抱一の絵はそれぞれ分けられた状態で保存されていますが。
綴プロジェクトで制作された高精細複製画は、
分けられる前の元の状態で再現されています。
琳派の絵師たちの繋がりを立体的に体感できる展示となっていました。
なお、第3章では、フリーア美術館のコレクションから、
再現された葛飾北斎の肉筆画の数々が紹介されています。
さてさて、これら綴プロジェクトで制作された高精細複製画は、
綴プロジェクトの本部(?)かキャノンがまとめて所蔵しているのかと思いきや。
すべて原本のもとの所有者に寄贈され、それぞれで保管されているとのこと。
つまり、この展覧会のためだけに、
日本各地から作品を集めてきたということです。
よくぞこれだけ集めてきたものだと、ただただ頭が下がります。
きっと米沢市上杉博物館の中の人たちには、
「なせばなる なさねばならぬ 何事もならぬは 人のなさぬなりけり」
の精神が染みついているのでしょう。
たかが高精細複製画。されど高精細複製画。
これだけ貴重な日本画が集まる空間は、
そうそう体験できるものではありませんよ。