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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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山本二三美術館

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長崎県五島列島の数ある観光スポットの一つ、武家屋敷通り。

 

 

 

幕末に建てられた福江城のほど近くにあり、

当時このエリアには、五島藩に仕えた中級武士たちの屋敷が並んでいたそうです。
特徴的なのが、石垣塀。
 
 
 
一般的な石垣の上に丸っこい石がたくさん乗せられています。
これは、「こぼれ石」と呼ばれるもので、
日本で数ヶ所しか確認されていないレアな石垣なのだとか。
もし、敵が塀を越えて屋敷に忍び込もうとした場合、
この「こぼれ石」が落ち、その音で危険を知らせるのだそうです。
 
 
さて、そんな武家屋敷通りに、
2018年に開館したのが、山本二三美術館。
江戸時代に建てられた武家屋敷「松園邸」を改修した、
五島出身のアニメーション映画・美術家、山本二三(にぞう)さんの美術館です。
 
 
 
もし、山本二三さんの名前を知らずとも、
彼が背景や美術監督を手掛けたアニメは、
日本人であれば、何かしら必ず目にしているはず。
山本さんが美術監督を初めて務めたのが、テレビアニメ『未来少年コナン』。
その後、『ルパン三世 カリオストロの城』や『天空の城ラピュタ』、
『火垂るの墓』『千と千尋の神隠し』『時をかける少女』『天気の子』などなど、
現在もなお第一線で活躍し続けている日本アニメ界のレジェンドの一人です。
 
館内では、そんな山本さんがこれまでに、
手掛けた数々の背景画がエピソードとともに展示されています。
 
例えば、『天空の城ラピュタ』。
 
 
 
実は場面によって、空を描き分けていたのだそう。
男性のキャラクターが登場する場合は、少し緑色を足し、
女性のキャラクターの場合は、淡い印象になるよう色を変えていたのだとか。
 
たかが背景画。されど背景画。
アニメではついついキャラクターの動きに目が向かってしまいますが。
背景画1枚に、強いこだわりが込められているのですね。
 
 
数ある背景画の中で、特に印象的だったのが、
ジブリ映画『もののけ姫』のシシ神の森を描いた背景画。
 
 
 
山本さん自身も会心の出来と自負しているようで、
「もし、私が死んだらこの絵を棺桶に入れてほしい」と、
冗談めかせて、周囲に語っていたそうです。
いやいや、これは名作ですので、棺桶には入れないでください!
 
それと、印象的だったのが、
『もののけ姫』のラストカットに関するエピソード。
普通は多くても描き直しを頼まれるのは3回くらいだそうですが、
宮崎駿監督はなかなか首を縦に振らず、7回も描き直しを命じたのだとか。
さすがに、“もうこれ以上は…”と思った山本さんは、
7回目の描き直しのあとに、「降参です。」と言って提出したとのこと。
その渾身の背景画を観て、ようやく宮崎監督は「これいいよな!」と納得したそうです。
「めんどくさい」が口癖の宮崎駿監督。
彼自身が一番めんどくさいような気がしました。
 
山本さんを苦しめた(?)アニメ監督は他にも。
 
 
 
実は、『時をかける少女』のポスターに使われたこの有名な背景画は、
締切まであと3日のタイミングで細田守監督が誰か描いてくれないかと言い出したそう。
しかし、どのスタッフも、たった3日で完成させられる自信はなく。
誰もがやんわり断り続けていたら、
山本さんが最後の一人となってしまい、
引き受けざるを得なかったのだそうです。
 
ところで、この絵にも描かれていますが、
山本さんの背景画には、印象的な雲がたびたび登場します。
これらの雲はファンの間で、「二三雲」と呼ばれているのだそう。
 
それゆえ、館内には、そんな「二三雲」を満喫できる、
山本さん描きおろしの『空と雲の部屋』が用意されています。
 
 
 
なお、こちらの部屋は写真撮影オッケー。
ソファーは雲型。
床面には、五島列島が描かれています。
空から五島列島を見てみよう。
 
 
 
また、再現されたアトリエも、
写真撮影がオッケーとなっています。
 

 

 
たくさんの画材や資料よりも、
気になってしまったのが、こちらのキューピー。
 
 
 
バナナキューピーでしょうか。
アトリエにいる間、ずっと彼の視線を感じていました。
 
 
ちなみに。
美術館では、アニメの原画の他にも、
山本さんのライフワークであった『五島百景』も紹介されています。

五島列島の自然や街並みなどを100点描いたもので、

足かけ10年に渡って制作され、昨年ついに完成したそうです。

なお、そのうちの1点《大瀬崎灯台と椿》は、

五島つばき空港にもパネルで展示されています。

 

 

 

アニメ好きな方はもちろん。

五島の景色が好きな方にもオススメな美術館。

美しい絵画の数々に、舞いあがること間違いなしです。

星

 




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