東京都庭園美術館で開催中の展覧会、
“交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー”に行ってきました。
交歓するモダン?
機能と装飾のポリフォニー??
正直なところ、どんな展覧会なのか、
タイトルからはまったく想像が付きません。。。
会場冒頭にあったパネルによると、1910~30年代におけるモダンデザイン、
それも、世界各地のモダンデザインにスポットを当てた展覧会であるようです。
一口にモダンデザインといっても、そのジャンルはさまざま。
家具もあれば、
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ファッションやファブリック、グラフィックデザインも。
他にも、絵画や食器、ポスターなど、
多岐に渡るモダンデザインが紹介されていました。
その数、実におよそ400点!
よくぞこれだけの数のものを集めたものです。
そして、よくぞこれだけの数のものを、
本館と新館の展示室に上手く配置したものです。
それも、ただ並べて展示するのではなく、
本館の建物の内装と、ちゃんとマッチするように展示されています。
すべての展示品が、ここしかないという、
ドンピシャの場所、収まるべきところにきちんと収まっており、
パズルのピースがしっかりハマっていたような爽快感すら覚えました。
庭園美術館の建物を、隅から隅まで、
知り尽くした学芸員さんだからこそ、なせる業です。
これまで東京都庭園美術館で、
数多くの展覧会を目にしてきましたが。
個人的には、今回の展覧会が、
もっとも展示品と本館の内装がマッチしていた気がします。
モダンデザインの名品の数々のおかげで、
本館の内装の魅力が3割増ししていたような。
そういう意味でも、庭美ファン必見の展覧会といえましょう。
なお、約400点ある展示品の中には、
ガブリエル・シャネルがデザインしたファッションや、
ル・コルビュジエがその才能に嫉妬したというアイリーン・グレイや、
「デ・ステイル」の中心人物の一人、リートフェルトがデザインした椅子、
今年の春に三菱一号館美術館にて、
大規模な個展が開催され話題となった上野リチの作品もありました。
(注:本展では、上野リチではなく、フェリーチェ・リックス・ウエノの名で紹介されています)
他にも、ウィーン工房やバウハウスのデザイン、
ポール・ポワレのファッション、ラウル・デュフィのテキスタイルなども紹介されています。
展覧会タイトルこそ、ささりませんが(←?)、
ファッション好きに、建築好きに、デザイン好きに、
さまざまなタイプの人にささる展覧会になっていますよ。
さてさて。1910年代から30年代にかけて、交通や通信の発達したことで、
情報が同期、共有され、国やジャンルを超えたモダンデザインが多数生まれたわけですが。
もちろん、その影響は日本にも及びました。
例えば、こちらは斎藤佳三によってデザインされた浴衣。
色味こそ、一般的な浴衣ですが、
その柄をよく見ると、実にモダンな仕上がりに。
手前の浴衣の柄なんて、昭和時代のファミコンの、
縦スクロールのシューティングゲームを彷彿とさせるものがあります。
また、個人的に嬉しかったのは、
『家具界きってのロマンティスト』と呼ばれた、
夭折の家具デザイナー・森谷延雄の家具が観れたこと。
サイドに将棋の駒を収納できるスペースがあり、
天板のチェック柄を使えば将棋が遊べるユニークなティーテーブルや、
真上から見ると、卍の形になっているブックラックなど、
森谷延雄好きとしては、彼の代表作の数々を目にできて、
それも、本館の空間で目にできてテンションがあがりました。
ちなみに。
展覧会で紹介されていた日本のモダンデザインの中で、
個人的に一番印象に残ったのは、木檜恕一(こぐれじょいち)による写真右のプロダクトです。
単なる筒状のサイドテーブルかと思いきや、
キャプションによると《火鉢兼用扇風機台》とのこと。
なぜ、その2つを合体させようと思ったのか。
冷暖房を兼ね備えた(?)元祖のプロダクトなのかもしれません。