大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、
瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレ、札幌国際芸術祭…etc
日本各地で毎年のように、
いわゆる“芸術祭”と呼ばれる野外美術プロジェクトが開催されています。
その草分けともいうべき、伝説的な野外美術プロジェクトが、
かつて、南アルプスのふもとの農村・白州で開催されていました。
それが、アートキャンプ白州。
記録写真や映像があまり残っていないため、
また、メディアにはあまり取り上げられる機会が無かったため、
知る人ぞ知る存在である伝説のアートフェスティバルです。
そんなアートキャンプ白州にスポットを当てた展覧会、
“試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか”が、
現在、千葉県の市原湖畔美術館で開催されています。
展覧会の冒頭に飾られていたのは、こちらの作品。
被写体は、『HOKUSAI』で老年期の北斎を演じ、
『鎌倉殿の13人』にも出演していた田中泯さんです。
最近はすっかり役者としてのイメージが強いため、
“なぜ、田中泯さん?”と思われた方もいらっしゃるでしょうが。
何を隠そう、アートキャンプ白州を立ち上げたのが、田中泯さんなのです。
農業をしながら身体を作り、その身体で踊りたい。
40歳の時に、そう決意した田中泯さんは、白州に移り住みました。
そこを拠点として生活する中で、1988年に立ち上げたのが、
アートキャンプ白州の前身となる白州・夏・フェスティバルです。
その後、毎年のようにイベントは開催され、
2001年からはダンス白州という名称に変更。
そのすべてに、田中泯さんは現場親方という形で参加しています。
今展では、そんな田中泯さんの撮り下ろしインタビュー映像はもちろん、
アートキャンプ白州を通じて、田中泯さんの手元に渡った作品の数々が出展されていました。
ちなみに。
冒頭で紹介されていたこの作品を制作したのは、
国内外で活躍する現代アーティスト名和晃平さん。
実は、名和さんは若き日に、
ボランティアとしてアートキャンプ白州に関わっていたのだそう。
その際に、大きなインスパイアを受けたのだそうです。
そんな縁もあって、今回の展覧会に、
名和さんはゲストキュレーターとして参画。
作品の出展はもちろんのこと、
会場の構成も担当しています。
さらに、名和さんがボランティア時代に撮影した、
アートキャンプ白州の貴重な写真の数々も公開されていました。
展覧会には他にも、アートキャンプ白州に携わった作家、
名和さんが思うアートキャンプ白州っぽい作家の作品も出展されています。
その中でも、特にインパクトがあったのは、
床一面に広がるこちらの黒い巨大な作品です。
プロジェクターの映像が反射して映るほど、
表面が黒くツヤツヤしていますが、その正体は、顔料ではなくオイル。
それも、廃油です。
当然ですが、匂いもします。
作者は、原口典之さん。
原口さんは代表作であるこの《オイルプール》を、
白州でも展示したかったそうですが、それは実現できず。
今回、こういう形で実現するにいたったそうです。
なお、作品以外に、貴重な資料映像も多く上映されているので、
展覧会というよりは、上質なドキュメンタリーを観ているかのようでした。
日本のアートの中心地は、もちろん東京か、
京都や大阪、名古屋、横浜といった地方都市。
そんな風になんとなく思っていましたが。
熱意さえあれば、日本のどこだって面白いことはできる。
そんなことを強く実感する展覧会でした。
ちなみに。
残念ながら、2009年を最後に、
白州でイベントは開催されていないそう。
この展覧会が契機となって、田中泯さんが、
新たな野外美術プロジェクトを立ち上げてくれますように。
ワンチャンお願いします!