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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

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現在、東京都美術館で開催されているのは、

“エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才”という展覧会。

あのクリムトに、「才能がありすぎる」と言わしめ、

20世紀初頭のウィーンで活躍した画家エゴン・シーレの大規模展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

28歳という若さで夭折。

そのドラマチックな人生もあいまって、

一定の層からカリスマ的な人気を誇るエゴン・シーレ。

しかし、意外にも彼の展覧会が日本で開催されるのは、30年ぶりとのこと。

ファンにとっては、まさに待望のエゴン・シーレ展です。

 

今回は、世界有数のシーレコレクションを誇る、

ウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、貴重なシーレ作品が50点も集結!

 

 

 

それらの中には、恋人だったヴァリー・ノイツェルを描いた《悲しみの女》や、

 

エゴン・シーレ《悲しみの女》 1912年 油彩/板 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

どことなくエヴァンゲリオン初号機を彷彿とさせる(?)、

初期の代表作《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》

 

エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》 1908年 

油彩、金と銀の顔料/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

油彩だけでなく、デッサンにも定評のある、

シーレのデッサン力がいかんなく発揮された《背を向けて立つ裸体の男》など、

 

エゴン・シーレ《背を向けて立つ裸体の男》 1910年 グワッシュ、木炭/紙 

個人蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

シーレの傑作が数多く含まれています。

その中でもハイライトというべきは、《ほおずきの実のある自画像》

生涯で多く描かれたシーレの自画像の中でも、もっともよく知られている作品です。

 

エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》 1912年 油彩、グワッシュ/板 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

ちなみに。

シーレは、よほど自分が好きだったのでしょう。

自画像だけでなく、ポートレートも数多く残しています。

そんなシーレのイケメンフェイスが

この展覧会の企画した方々も、お好きだったのでしょう。

 

 

 

等身大以上の大きさに引き伸ばされた、

シーレのポートレートが随所に使われていました。

展覧会で、芸術家のポートレートが紹介されることは多々ありますが、

これほどまでに大きく引き伸ばして紹介されたのは初めて目にしました。

 

 

と、それはさておきまして。

実を言うと、これまでシーレに対して、

あまり良い感情を持っていませんでした。

それは、以前、シーレを主人公にした映画、

『エゴン・シーレ 死と乙女』を観たからに他なりません。

あの映画を観て以来、完全に人間的にシーレが嫌いになりました。

 

 

 

そんな状態で、展覧会を観たわけですが、

率直に言って、作品は本当に素晴らしかったです。

作品1点1点から発せられるパワーがスゴすぎて!

これは天才と認めざるを得ません。

本人の人間的な部分はさておいて、作品は魅力的。

心を鷲掴みにされるほど、グイグイと惹きつけられました。

 

自画像を含む人物画にも、もちろん惹きつけられたのですが、

個人的には今回、シーレの描く風景画に強く惹きつけられました。

 

エゴン・シーレ《吹き荒れる風のなかの秋の木(冬の木)》 1912年 油彩、鉛筆/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

エゴン・シーレ《モルダウ河畔のクルマウ(小さな街Ⅳ)》 1914年 油彩、黒チョーク/カンヴァス

レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

とりわけ心を惹かれたのは、こちらのデッサン。

 

 

 

シンプルながら、センスを感じる、

いや、センスしか感じない逸品です。

シーレの作品はデッサンも含めてどれも、

情念のようなものが画面全体にびっしりと込められていて、

しばらく観ていると、生気を吸い取られてしまいそうになるのですが。

このデッサンに限っては、親しみのようなものが感じられました。

シーレの意外な一面が垣間見れた気がします。

 

 

さらに、今回の展覧会では、クリムトを筆頭に、

 

グスタフ・クリムト《シェーンブルン庭園風景》 1916年 油彩/カンヴァス

レオポルド美術館に寄託(個人蔵) Leopold Museum, Vienna

 

 

ココシュカやオッペンハイマーといった、

シーレ以外のウィーンの芸術家の作品も多数来日しています。

その数、実に約70点。

シーレの作品50点と併せると、

出展数約120点という大充実の展覧会です。

「史上最大のエゴン・シーレ展」という看板に一切の偽りなし!

早くも2023年大本命展覧会の誕生です。

星星星

 

 

ちなみに。

今回、シーレ以外に注目したいのが、リヒャルト・ゲルストル。

25歳という若さで自殺し、生前は評価されなかったものの、

のちに再評価されたことから、「オーストリアのゴッホ」との異名を持つ画家です。

 

リヒャルト・ゲルストル《半裸の自画像》 1902/04年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 

 

 

ゲルストルは、シーレに先駆け、

オーストリア表現主義の最初の画家とも称されています。

そのドラマチックな半生と、

荒ぶるような筆致は、シーレよりもシーレでした(←?)。

この展覧会を機に日本でもブレイクするかも。

美術ファンであれば、チェックしておきたい画家です。

 

 

それと、もう一人注目したいのが、

ウィーン工房を設立したコロマン・モーザ-。

コロマン・モーザーでよく知られているのは、

座面が市松模様になっているアームチェアです。

それゆえ、デザイナーという印象が強いですが、

実は、ウィーン工房を離れた後は、絵画の世界で活躍していたそう。

今回の展覧会では、そんなモーザーの絵画作品がフィーチャーされていました。

 

コロマン・モーザー《キンセンカ》 1909年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵

Leopold Museum, Vienna

 

 

個人的に一番惹かれたのが、《山脈》という一枚。

 

 

 

色彩はどれも淡く繊細な印象で、

どことなく、日本っぽさも感じられるような、

なんとも不思議な味わいの作品でした。

あと、お線香の青雲っぽさも、そこはかとなく感じられました。

 

 

 

 

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