この春、山種美術館では特別展として、
“富士と桜 ―北斎の富士から土牛の桜まで―”が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
例年、山種美術館は春の時期になんとなく桜を、
もしくは広く花全般をテーマにした展覧会が開催されているイメージがあります。
しかし、今年2023年は、奥村土牛の《醍醐》や、
奥村土牛《醍醐》 1972(昭和47)年 紙本・彩色 山種美術館
千住博さんの《夜桜》をはじめとする、
千住博《夜桜》 2001(平成13)年 紙本・彩色 山種美術館
桜が描かれた名品の数々が楽しめるだけではなく!
今年2023年が、富士山が世界遺産に登録されてから、
ちょうど10年目ということで、富士山が描かれた名品も数多く展示されています。
富士山と言えばもちろんこの人、横山大観の作品も。
そして、富士山を多く描いた日本美術界のもう一人のレジェンド、葛飾北斎の浮世絵も。
さらに、今回は特別に、山種美術館が所蔵する北斎の浮世絵以外に、
日本一の『北斎漫画』コレクター・浦上満さんが所蔵する『富嶽百景』も特別展示されています。
桜と、富士山と。
日本人の心、日本人のアイデンティティである、
2大巨頭が揃った全日本人必見ともいうべき展覧会。
「全日が泣いた」と言っても過言ではない展覧会です。
今回出展されていた桜を描いた作品の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、渡辺省亭の《御殿山観花図》。
手前を歩く女性は、桜柄の着物を着ているのかと思いきや。
よく見ると、折った桜の枝を手にしているようです。
ちょっとではなく、だいぶと大胆に手折りましたね。
ワシントンの父親なら激怒するレベルです。
富士山が描かれた絵画で、特に印象的だったのは、
実に10年ぶりの公開となるという平福百穂の《霊峰》という一枚。
富士山に辿り着くまでの道のりがハード。
これは一体、日本のどこを描いたものなのでしょう?
飛行艇のようなものが無ければ、
あの富士山には辿り着けない気がします。
それから、平福百穂が描いた富士山といえば、こんな作品も。
右に描かれているのが、もちろん富士山。
左に描かれているのは、筑波山なのだそうです。
見た目の質感的には、あんみつに入っている牛皮かと思いました。
妙に美味しそう。
他に富士山が描かれた絵で印象的だったのが、
明治時代に帝室技芸員として活躍した田崎草雲によるこちらの一枚。
タイトルは、《瑞夢(富士・鷹・茄子)》とのこと。
つまり、初夢でお馴染みの「一富士二鷹三茄子」が描かれています。
富士山は遠くにあるので、まだ仕方ないとして、
鷹はもう少し大きく描けなかったものでしょうか??
明らかに、茄子が目立ちすぎ。
「一茄子二富士、三四が無くて、五鷹」といったところです。
最後に紹介したいのは、小松均の《赤富士図》。
小松均《赤富士図》 1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館
小松均は、この富士山の絵に挑むために、
麓に小屋を建て、そこに籠って描いたのだそう。
その並々ならぬ気迫が絵からヒシヒシと伝わってきました。
もはや『ドラゴンヘッド』の世界観です。
展覧会では、そんな小松均の言葉も紹介されています。
斉藤和義の歌詞かと思いました。