この春、国立西洋美術館では、
“憧憬の地 ブルターニュ”が開催されていますが。
SOMPO美術館でも現在、“ブルターニュの光と風”という展覧会が開催されています。
英仏海峡と大西洋に突き出た半島で、
フランス北西部に位置するブルターニュ地方。
かつてはブルターニュ公国という独立国だったそうで、
独自の文化を持つことから、フランス国内の「異郷」とも呼ばれる地域です。
そんな芸術家たちにインスピレーションを与えた、
ブルターニュという土地に着目した初となる展覧会・・・もとい、
西美のほうが1週間早く始まってしまっているので、2番目となる展覧会です。
ちなみに。
ブルターニュにスポットを当てた展覧会が、ほぼ同じタイミングで、
西美とSOMPO美術館で開催されているのは、まったくの偶然とのこと。
くわえて、ブルターニュではないものの、
南仏という地域にスポットを当てた展覧会が、
ちょうど今、DIC川村記念美術館で開催されているのもまた、まったくの偶然とのこと。
なんともスゴい偶然が重なったものです。
何かしらのご利益がありそうなので、3つともコンプリートしたいところですよね。
さて、ブルターニュにスポットを当てた展覧会ゆえ、
当然ではありますが、国立西洋美術館での展覧会と同様に、
SOMPO美術館でも、モネやゴーギャン、ナビ派の画家たちの作品が紹介されています。
さらに、シャルル・コッテやリュシアン・シモンといった、
「バンド・ノワール(黒の一団)」の画家たちの作品も紹介されていました。
シャルル・コッテ《嵐から逃げる漁師たち》 1903年頃 油彩/厚紙 54×75cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
・・・・・と、内容が重なる部分もありましたが、
西美のほうのブルターニュ展は、出展作のほとんどが、
国内の美術館や個人コレクションで構成されていたのに対して。
SOMPO美術館のブルターニュ展は、出展作の多くが、
ブルターニュ地方にあるカンペール美術館から来日しています!
つまり、ブルターニュ度(?)がより濃い展覧会といえましょう。
そんなSOMPO美術館のブルターニュ展で特に注目したいのが、第1章。
こちらでは、「ブルターニュの風景−豊饒な海と大地」と題し、
サロンに作成を出品し、活躍した画家たちの作品を紹介しています。
サロンに出展された作品だけあって、
大きく、ド迫力のものが多くを占めていました。
大画面の西洋絵画がこれだけまとまった形で、
来日しているのは、久しぶりであるような気がします。
それらの大作の中で特に印象に残っているのが、
アルフレッド・ギユによる《さらば!》という作品です。
アルフレッド・ギユ《さらば!》 1892年 油彩/カンヴァス 170×245cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
嵐に遭遇し、転覆した一艘の船。
死を覚悟した状態で、屈強な中年男性は、
上半身裸の瀕死の若い男性にキスをしています。
おっさんずラブ?
と思ったら、父親と息子とのこと。
感動的なシーンではあるのでしょうが、
この状況を自分と父に置き換えてみると、なんか複雑な感情になりました。
それから第1章で紹介された作品の中から印象的だったものを、もう一点。
《さらば!》とともに、今展のメインビジュアルに採用されている、
リュシアン・レヴィ゠デュルメールの《パンマールの聖母》という作品です。
描かれているのは、西洋絵画で最も描かれているモチーフとされる聖母子。
しかし、一般的な聖母子像と違って、
ブルターニュ地方の伝統的な衣装を身に付けています。
しかも、背景に描かれているのも、ブルターニュ地方の景色です。
リュシアン・レヴィ゠デュルメール《パンマールの聖母》 1896年 油彩/カンヴァス 41×33cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
そういった違和感のせいでしょうか。
はたまた、顔だけくっきりと描かれているからでしょうか。
どうにも観光地にある顔はめパネルのようにしか見えませんでした。
さてさて、今展の見どころは何と言っても、先述したアルフレッド・ギユや、
リュシアン・レヴィ゠デュルメールを筆頭に、「はじめまして」の掘り出し物の画家が多いこと。
“甘くないクリスチャン・ラッセン”とでも表現したくなるテオドール・ギュダンや、
テオドール・ギュダン《ベル゠イル沿岸の暴風雨》 1851年 油彩/カンヴァス 131.5×202.5cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
ルドンの絵画とディズニー映画を足して2で割ったような、
フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドーも良かったですが。
フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドー《藁ぶき屋根の家のある風景》
1921年 油彩/カンヴァス 81.5×60.5cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
個人的に推したいのは、ウラディスラウ・スレヴィンスキー。
ポーランドの貴族の家に生まれた画家です。
彼はゴーガンとパリで出逢い、その人物に強く惹きつけられたのだとか。
それゆえ、作品にはゴーギャンの影響がもろに出ていました。
ウラディスラウ・スレヴィンスキー《バナナのある風景》 1901年 展示風景
溢れ出るゴーギャンへのリスペクト。
そこを隠そうとしないところに、かえって好感が持てました。
『YOUは何しに日本へ?』に登場するYOUみたいな感じです。
それからもう一人推したいのが、ブルターニュ地方出身のピエール・ド・ブレ。
彼は、ブルターニュとパリを行き来していたようで、
パリではピカソらが集った洗濯船に出入りしていたそうです。
ピエール・ド・ブレ《ブルターニュの女性》 1940年 油彩/カンヴァス 73×63cm カンペール美術館
Collection du musée des beaux-arts de Quimper, France
描かれている女性は、どことなく、
さくらももこのタッチを彷彿とさせるものがありました。
と、それはさておき。
ぜひ絵に近づいて、その描き方にご注目くださいませ。
ピエール・ド・ブレ《ブルターニュの女性》(部分) 1940年
画面全体が交差する線で構成されています。
この独特すぎる描き方は、ブレが考案したもので、
彼自身によって、「トレイリスム(格子状技法)」と名付けられました。
あまりに斬新な技法ゆえに、ブレの代名詞だったようなのですが。
おそらく面倒だったからでしょう、
途中でトレイリスムは捨ててしまったそうです。
確かに、面白い技法ではありますが、感動はそこまでないかも(笑)。
コスパの悪い技法です。
┃会期:2023年3月25日(土)~ 6月11日(日)
┃会場:SOMPO美術館
┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2022/bretagne2023/
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