日本を代表する建築家・丹下健三によって、
昭和52年に現在の建物が竣工した草月会館。
その1階には、世界的なアーティスト、
イサム・ノグチによる石庭「天国」があります。
そんな「天国」を舞台に現在開催されているのが、“ケリス・ウィン・エヴァンス展”。
ウェールズ出身の現代美術作家、ケリス・ウィン・エヴァンスによる個展です。
もし、ケリス・ウィン・エヴァンスという名前にピンと来なくとも、
ここ数年の間に、ポーラ美術館を訪れた方であれば、吹き抜けに設置された・・・・・
この作品を目にした記憶があるはず。
巨大なネオン管で制作されたこの作品を作ったのが、ケリス・ウィン・エヴァンスです。
丹下健三×イサム・ノグチのコラボした空間に、
国際的に活躍するケリス・ウィン・エヴァンスがコラボ。
まさに、アートファンにとっての「天国」が誕生していました。
そんな天国のような空間に設置されているのが、
ライトセーバーを巨大化させたような3本の光の柱です。
これらは常に光を放っているのではなく、
深呼吸のような緩やかな周期で明滅を繰り返しています。
さらに、会場の一角には、まるでワームホールのような作品もありました。
タイトルは、《Composition for 37 flutes》。
つまり、37本のフルートとコンプレッサーからなる作品です。
どこに、フルートがあるのかと思えば、
棒状のものはすべて、クリスタル製のフルートでした。
コンプレッサーから空気がに送られると、
当然のように、フルートから音が奏でられます。
とはいえ、人間の指に該当するようなパーツは無いため、
ただただ、「♪フワ~ン」「♪プワ~ン」と音が漏れ出るだけ。
会場では、まるであくびをしているかのような音がかすかに響き渡っていました。
今回の展覧会のメインとも言うべき作品は
石庭の最上段に設置されていた《F=O=U=N=T=A=I=N》です。
空間に浮かび上っているテキストは、
マルセル・プルースト『失われた時を求めて』の一節。
これらの文字はすべて、もちろんネオン管で作られています。
「頻繁」とか「隙間」とか、画数の多い漢字を、
よくもまぁこれだけ「緻密」に作ったものだと感心。
『失われた時を求めて』においては、主人公は、
マドレーヌを食べた瞬間に過去の記憶がまざまざと蘇りましたが。
今後、自分はネオン管を観るたびに、
この展覧会の記憶が蘇るような気がしています。
ちなみに。
六本木にあるタカ・イシイ・ギャラリーでも、
同期間で“ケリス・ウィン・エヴァンス展”が開催中。
草月会館の個展会場では、松の木が随所に設置されていましたが、
タカ・イシイ・ギャラリーの会場でも、やはり松の木とネオン管が設置されていました。
しかも、この松、ゆっくりと回っています。
松が回っているのか。
もしかしたら、僕らが回っているのか。
もしくは、回転寿司から回転システムが無くなることへの警告なのか。
いろいろ頭を回転させてみましたが、答えは出ませんでした。
なお、ギャラリー内には、松以外の鉢植えもたくさんあります。
屋外のスペースにも。
現代アートのギャラリーというより、
植木屋さんのような様相を呈していました。
ふと、その先に目をやると、何やらテキストがあります。
もしや、それもケリス・ウィン・エヴァンスの作品?
いや、全然関係なかったです。
そもそも、ネオン管じゃないですし。