現在、資生堂ギャラリーで開催されているのは、
“あいだ に あるもの―1970年代の資生堂雑誌広告から―”という展覧会。
こちらは、サブタイトルにあるように、
1970年代の資生堂雑誌広告に焦点を当てた展覧会です。
会場には、1970年代の資生堂を代表するブランド、
香水「モア」や「ナチュラルグロウ」の雑誌広告が原寸大で一堂に会しています。
テレビCMやポスターに焦点を当てた展覧会は少なくないですが、
雑誌広告に焦点を当てた展覧会は、僕が知りうる限りでは初めて。
ありそうでなかったタイプの展覧会です。
雑誌文化が花開いた1970年代がそうだったのか。
はたまた、資生堂のクリエイティブがそうだったのか。
何より印象的だったのが、そのコピーです。
例えば、「シフォネット」の雑誌広告。
そのコピーに注目してみると・・・・・
『シフォネット美人がころんでも美しさは変わらない。』、
『愛される美女はブルースを聞きなさい。』とありました。
正直なところ、意味がよくわかりません(笑)。
というか、そもそも商品の説明になっていません。
美しいレイアウトと、意味深で物語性のあるコピー。
そのカッコよさで、ブランドイメージをアップしていたようです。
現代の広告は一般的に、企業が消費者に対して、合わせにいってる感がありますが。
この頃の雑誌広告、とりわけ資生堂の雑誌広告は、
消費者に対して、合わせにいってる感は一切ありません。
むしろ、消費者が資生堂の世界観に憧れ、合わせにいってたのでしょう。
そんなことを特に感じたのが、男性用化粧品の「ブラバス」の雑誌広告。
ちなみに。
似たような雑誌広告が縦に並んでいますが、
これは当時、掲載する雑誌によって、微妙に異なるものを掲載していたからとのこと。
雑誌広告一つとっても、わざわざバージョン違いを作成する。
資生堂のクリエイティブワークのこだわりが垣間見えました。
と、それはさておき、「ブラバス」のコピーにご注目。
『窓外新緑、戦士休息。』や、
『失敗続発、連日不調。』など、
四字熟語×2で統一されています。
そして、ことごとく意味がよくわかりません(笑)。
漢文の授業を受けているようです。
『目標江川、明日先発。』にいたっては、
野球選手にしか刺さらないコピーではなかろうか。
さらに、「ブラバス」の雑誌広告の後半は、
「○○○、あなた」というコピーに代わったようで。
その中には、こんな広告もありました。
マッチョが上半身裸で鉄棒をしている。
謎にもほどがあるビジュアルに、「げんきですか、あなた。」というコピー。
聞くまでもなく、「そりゃ元気だろ!」とツッコみたくなる雑誌広告です。
さらに、こんな広告も。
ほっといたれよ!
わざわざ声掛けんなよ!
1970年代だから許されたのでしょうが、
たぶん、今こんなコピーの広告を出したら、
数日も経たないうちに炎上→取り下げになると思います。
なお、男性用化粧品といえば、「MG5」の雑誌広告も紹介されていました。
若すぎて、全然気がつきませんでしたが、
この広告のモデルを務めていたのは、草刈正雄さんと、
3月に逝去された団時朗さんだったそうです。
ちなみに。
会場の一角では、現代アーティストらによって製作された、
「MG5」の雑誌広告を使用した展覧会オリジナルムービーが、
これまた展覧会オリジナルのアンビエント音楽とともに上映されています。
近年、若者を中心に“レトロでエモい”と、
80年代ブームが巻き起こっていましたが。
今展を機に、70年代ブームが起きるかもしれません。
そう思いませんか、あなた。