千葉県が誇る“写実絵画の殿堂”ことホキ美術館に行ってきました。
現在、こちらで開催されているのは、
“瞳の奥にあるもの—表情でみる人物画展—”という展覧会。
ホキ美術館の写実絵画コレクションの中から、
その表情が特徴的な人物画の数々を紹介する展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
出展されている作品の中には、
ホキ美術館コレクションの中でも屈指の人気を誇る生島浩さんの《5:55》や、
新世代の写実画家としてバズりまくっている三重野慶さんの出世作《信じてる》といった、
ホキ美術館ファン、写実絵画ファンには、
お馴染みの作品の数々が多数含まれています。
さらに!
廣戸絵美さんが自身の子どもをモデルに描いた《冬萌》や、
元気に泣いている赤ちゃんを描いた藤田貴也さんの《A girl》といった、
今回が初公開となるオニューな顔ぶれも多数含まれています。
また、そんな初公開作品の中には、出来立てホヤホヤすぎて、
HPやチラシにも載っていない五味文彦さんの超最新作《青い服の女》も。
写実絵画界のスーパースターの最新作が観られるのは、ホキ美術館だけ。
さすが“写実絵画の殿堂”です。
今回紹介されていた初公開の作品の中で、
特に印象に残っているのは、塩谷亮さんの《KANON -15years old-》。
少女はマスクを付けようとしているのでしょうか。
それとも、外そうとしているのでしょうか。
また、テーブルの上に置かれた鳥の頭蓋骨はおそらく、
17世紀にペストが流行した際に、医者が身に付けていたくちばし型マスクのメタファー。
まさに、アフターコロナの世相を切り取った作品です。
それから、もう一点印象的だったのが、
三重野慶さんによる《どうしよう》という作品。
何がどう、どうしようなのかはわかりませんでしたが。
モデルの女性の表情を見るに、彼女はきっと心ここにあらず。
何か良からぬことを思い出して、
「どうしよう?」と途方に暮れているのかもしれません。
あるいは、何をしてもノーリアクションな彼女に対し、
「どうしよう?」と次の一手を考えている様を描いた作品なのかも。
何はともあれ、彼女がどうもしていないことを祈るのみです。
また、今展では石黒賢一郎さんの「Injection Device」シリーズの最新作も公開されています。
「Injection Device」シリーズとは、石黒さん創作によるオリジナルストーリーを基にしたもの。
そのストーリーをざっとまとめると、以下のようになります↓
時は、2047年。
世界各地でウイルステロが発生。
そのウイルスに感染し、死を免れたものは異形化してしまった。
しかし、ウイルスに感染したものの、
科学者である父が開発したワクチンにより、かろうじて一命を取り留めた少女がいた。
その名は、ユウキ。
彼女は首に装着した“Injection Device”から、定期的にワクチンを注入し続けている。
そして、その副作用として驚異的な力を手に入れた。
さらに、父が開発したナノマシンを全身にまとい、
より強靭な力を得たユウキは、異形化した人々や、
独裁国家の戦闘兵器から人類を守る戦いに挑むのであった!
で、こちらがその最新作。
《細胞融合増殖抑制装置001》です。
少女ユウキの肌や髪の毛、洋服の質感、
手にしたデバイスの質感の描き分けにも驚きましたが、
何より驚いたのは、絵を囲む金属製の何やらが、実は金属ではないという事実。
実際はプラスチック製だそうで、その上から彩色し、金属に見せかけているのだそうです。
その事実を知った上で、マジマジと観てみましたが・・・・・
やはり金属にしか見えませんでした。
石黒さん、恐るべし。
なお、もう一つの最新作《INJECTION DEVICEを持つ》も同様で。
一見すると、錆びた金属の上に、
絵が描かれているように思えますが。
錆びに見える部分も、絵具で描かれているそうです。
思わず手で触って確かめてしまいたくなるくらいに、完璧なる錆び具合でした。
ちなみに。
展覧会のタイトルが“瞳の奥にあるもの”なので、
作品に描かれた人々の瞳に、改めて注目して観てみました。
すると、三重野慶さんの《信じてる》の瞳の中に・・・・・
誰かが立っていました。
瞳に映るあなたは何者?
ちょっとしたミステリーです。