ダンボール造形作家・玉田多紀さん(1983生)。
その関東の公立美術館では初となる大規模展覧会、
“造形作家 玉田多紀 ダンボール物語”が、平塚市美術館で開催されています。
ダンボールはダンボールでも、
一度使われたダンボール、いわゆる古紙ダンボールを使って、
動物や恐竜といった生きものを制作している玉田多紀さん。
SDGsが叫ばれる昨今、特に注目を集めていますが、
実は彼女が古紙ダンボールを素材を選ぶようになったのは、15年以上も前のこと。
SDGsが浸透する前から、古紙ダンボール一筋で制作しているそうです。
また、ダンボールを素材にした作品と聞くと、
なんとなく、ペーパークラフト的なものを思い浮かべたかもしれませんが。
彼女の制作方法は実にユニークで、
まず、古紙ダンボールを水に浸けて、ふにゃふにゃな状態にし、
パルプに戻したところで、粘土のようにして造形していくのだそうです。
また、パーツとパーツは、一般的な木工用ボンドで止めているとのこと。
さてさて、そこで気になるのが、作品の強度。
ダンボールとボンドだけだと、心もとないような・・・?
もちろん作品に触ることは出来ませんが、
1点だけ実際に触ってもOKな作品があったので、手にしてみることに。
その抱えてみた率直な感想は、
想像していたよりも、硬かったです。
そして、想像していたよりも、軽かったです。
この感覚、何かに似ているような・・・・・ハッ!張り子だ!!
さらに言えば、阿修羅像に用いられている乾漆造にも通ずるものがある気がします。
ダンボールとボンドとだけ聞くと、
トリッキーなような印象を受けるかもしれませんが、
彼女がやってることは、ある意味、日本の伝統を受け継いでいるような。
いつか玉田多紀版の阿修羅像を作ってもらいたいです。
と、それはさておき。
彼女のキャリア最大規模となる今展では、新作を含む約130点が出展されています。
ハイライトは何と言っても、絶滅危惧種をモチーフにしたこちらのコーナー。
絶滅危惧種に指定されたからと言って、
彼ら動物たちが急に生き方を変えるわけではありません。
動物たちはこれまで通り生きていく。
そんな想いが込められているのだとか。
それらの動物の中で気になったのが、こちらのハシビロコウです。
動かない鳥として人気のハシビロコウ。
「動くかなら?動かないのかな?」と、
動物園では常に観客たちの視線を一身に浴びています。
その背中に背負ったプレッシャー(?)が、花として表現されていました。
なお、これまで彼女の作品では、
ダンボールの表面に印刷された文字は、
意識して使わないようにしてきたそうなのですが。
人間の視線を可視化したものゆえ、
この作品ではあえて文字を見せているのだそうです。
ただ、まぁ、ハシビロコウはアフリカの鳥なので、
アマゾン(Amazon)は使わないほうがよかったような(笑)。
展覧会は他にも見どころがたくさんありますが、
その中でも特に見逃せないのが、こちらの新作です。
玉田さん自身のお子さん(6歳)をモデルにした作品とのこと。
どの動物ももちろん生き生きしていましたが、
やはり、この子が一番生き生きしていたように思います。
ちなみに。
ダンボールから、これだけ生き生きした作品を生み出している方なので、
きっとバイタリティー溢れる方なのだろうと、なんとなく想像していたのですが。
実際に初めてお会いした玉田さんは、その何十倍もバイタリティー溢れていました!
そのバイタリティーは、ギャラリートークでも存分に発揮。
ギャラリートークというより、もはや漫談でした(笑)。
この展覧会に合わせ、気合を入れて髪をピンクに染めたとのこと。
一瞬、野沢直子さんかと思ってしまいました。
なお、会期中に何度か玉田さんは在館されているそうですが、
いらっしゃらない時でも、QRコードをスキャンすれば、彼女のトークが楽しめます。