現在、静嘉堂@丸の内で開催されているのは、
“サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―”という展覧会。
「サムライのおしゃれ」をキーワードに、
静嘉堂文庫コレクションの名品の数々を紹介するものです。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
サムライがおしゃれ??
そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、
ビジネスマンがスーツやネクタイをおしゃれするように、
当時のビジネスマンでもあったサムライもまた、おしゃれをしていたのです。
例えば、刀剣の拵え、つまり外装は絶好のおしゃれポイント。
シックな黒漆塗りの鞘もあれば、
『マトリックス』を彷彿とさせるサイバー感ある鞘もあります。
さらに、おしゃれ上級者になれば、
カフスやネクタイピンにも気を遣うように。
目貫や笄、小柄といったワンポイントでも、
おしゃれサムライたちは、そのセンスをいかんなく発揮しました。
特に鑑賞していて楽しかったのが、鍔のバリエーションの豊かさ。
いわゆる時代劇で目にするようなシンプルな鍔もありましたが、
今回紹介されていた鍔の中には、変わり種が多く含まれていました。
こちらの鐔は、十二支が漢字で表されたもの。
どんな需要があって、こんな鍔が制作されたのか謎ですが。
さらに、謎だったのが、京透しと呼ばれるこちらの《文字透し鐔》です。
透しで表されているのは、
「慕」「募」「暮」「蟇」「墓」「幕」のよく似た6文字。
いや、だから何?!
戦闘中、鍔迫り合いになった際に、
“ん?全部同じ漢字かと思いきや、よく見たら違うではないか!”と、
相手に思わせて、その隙をついて攻撃できるとか?
また、サムライは、刀以外でもおしゃれを楽しんでいました。
一般的に、サムライは刀剣を左の腰に2本差しています。
では、その反対側、右の腰に差していたのは・・・・・
そう、「この紋所が目に入らぬか!」でお馴染み(?)の印籠です。
実は、静嘉堂コレクションには、約280点の印籠があるのだそう。
しかし、とてもそのすべてを公開できないため、
今展では、その中から選りすぐりの40点が紹介されています。
ところで、そもそも印籠とは一体何なのでしょうか?
かつては印鑑や印象を入れていたという説もあるそうですが、
江戸時代においては、薬入れ、いうなればピルケースとして使われていました。
そのため、薬を長期保存できるように、
空気が入り込まない密閉された容器である必要があります。
なおかつ、その性質上、スッと簡単に取り出せる必要もあります。
つまり、1㎜の狂いもなく内側と外側を合わす超絶技巧な職人技が要求されたのです。
あの紋所が目に入らなくても、思わず 「ははぁ~」 となってしまいました。
なお、職人技が発揮されているのは、印籠だけにあらず。
印籠を携帯するため、帯にくぐらせる留具、
いわゆる、根付にも超絶技巧な職人技が見て取れます。
工芸界の小さな巨人、それが値付。
小さいながらも、ずっと眺めていても、
決して、見飽きることはありませんでした。
さて、展覧会では他にも、サムライだけでなく、
当時の貴族や町人たちのおしゃれも楽しめる風俗画も展示されていましたが。
さて。この展覧会の目玉はやはり、
なんと言っても、こちらのサーベルでしょう!
こちらは、2021年に静嘉堂文庫の書庫で発見され、
発表当時大きな話題となったもので、今回が満を持しての初公開となります。
刀身に注目してみると、何やら文字が施されていますね。
その右上に、「GOTO SHOJIRO」とあります。
「GOTO SHOJIRO」、すなわち後藤象二郎。
あの坂本龍馬に「同志」「才物」と言わしめた土佐藩出身の人物です。
こちらのサーベルは、1868年に起きたパークス襲撃事件(※)で、
公使を守った後藤に対し、感謝のしるしとしてイギリスのビクトリア女王から贈られたもの。
歴史的にも貴重なサーベルです。
(※イギリス公使パークス一行が攘夷を訴える2人の男に襲撃された事件)
ちなみに。
サーベルの柄の部分は、象牙製でした。
柄頭はライオンの頭の形に掘り出されています。
なんかPEZみたいです。