東京国立近代美術館で開催中の展覧会、
“ガウディとサグラダ・ファミリア展”に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
こちらは、スペインが生んだ天才建築家アントニ・ガウディと、
その代表作であるサグラダ・ファミリア聖堂を主役にした大規模展覧会です。
《ガウディ肖像写真》 1878年、レウス市博物館
展覧会は全部で4章立て。
まず第1章「ガウディとその時代」では、
ガウディがアイディアを書き留めていた直筆ノートや、
アントニ・ガウディ《ガウディノート》 1873~79年 レクス市博物館
学生時代のガウディが描いた設計図面といった、
ガウディにまつわる貴重なアイテムが多数展示されています。
これらはガウディの故郷スペインから、今展のためだけに来日した貴重な品々。
ガウディファン、建築ファン垂涎のアイテムといえましょう。
ちなみに。
それらの中には、ガウディのデスマスクもありました。
左)ジュアン・マタマラ《ガウディ(デスマスク)》 1926年以降 サグラダ・ファミリア聖堂
輝かしい業績や才能から、順風満帆な人生を歩んだような、
印象が持たれがちなガウディですが、意外にもその最期はとても悲しいものでした。
73歳だったガウディは、ある日、ミサに向かう途中で縁石につまずき転倒してしまいます。
そして、運の悪いことに、路面電車に撥ねられてしまうのです。
それに気づいた通行人が助けようとするも、晩年のガウディは、
あまりにも身なりが汚かったため、タクシーにことごとく乗車拒否されてしまいました。
そして、早期治療が受けられず、重体のまま3日後に死去してしまうのです。
なお、乗車拒否はされたものの、ガウディの人気は絶大だったようで。
その葬儀の際には、ガウディの遺体を運ぶ馬車の後ろに、約1.5kmの行列ができたそうです。
それだけの国民的スターを乗車拒否しただなんて。
もし、現代であったなら、ネットの特定班が、
そのタクシー運転手たちを探しだし、情報を晒していたことでしょう。
・・・・・と、それはさておき。
続く第2章「ガウディの創造の源泉」では、
ガウディが制作した模型や家具などを、彼の言葉と交えて紹介。
天才ガウディのクリエイティビティに迫るものとなっています。
ガウディが特に重視していたというのが、釣り合いの法則。
これは、自然の法則に従ったもっとも合理的な構造は、釣り合いが取れているというもの。
ガウディはその理想的な“釣り合い”を探るため、
天井から紐やおもりをぶら下げる研究を10年以上続けたのだとか。
コローニア・グエル教会堂、逆さ吊りの模型(1984~85年 西武文理大学)
で、この形を逆さまにしたものを・・・・・
実際の建築に応用しようとしたのでした。
ただ紐とおもりが反転しただけのものなのに、
不思議と、これだけでガウディ建築のように思えてしまいます。
さてさて、第1章、第2章もそれなりに充実していましたが、
今展のハイライトは何と言っても、第3章の「サグラダ・ファミリアの軌跡」でしょう!
サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família
こちらは、いよいよ完成が視野に迫ってきたサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を当てた章です。
手前)《サグラダ・ファミリア聖堂 身廊部模型》 2001~02年 西武文理大学
貴重な建築模型はもちろんのこと、照明器具や建築を飾る彫刻など、
サグラダ・ファミリア聖堂に関するあれこれが余すことなく紹介されています。
《サグラダ・ファミリア主身廊天井ヴォールト模型》 2002年頃以降 サグラダ・ファミリア聖堂
中でもひと際目を惹くのが、こちらの彫刻群。
1978年からサグラダ・ファミリア聖堂に携わっている彫刻家、
外尾悦郎さんの《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち》です。
他の展示品はほとんどが模型ですが、
こちらは、2000年に現行の石像に置き換わるまで、
実際にサグラダ・ファミリア聖堂の「降誕の正面」に設置されていた本物。
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち》
サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に1990-2000年に設置、作家蔵 写真提供:株式会社ゼネラルアサヒ
これまでガウディをフォーカスした展覧会には何度か足を運んでいますが、
サグラダ・ファミリア聖堂を感じられる展示品は、正直なところ、出逢ったことがないような。
そういう意味では、サグラダ・ファミリア聖堂彫刻家・外尾さんの作品は説得力があります。
これが観られただけでも、東京国立近代美術館に足を運んだ甲斐がありました。
ちなみに。
展覧会の終盤で、NHKがドローンも駆使し、
高精細で撮影したサグラダ・ファミリア聖堂の映像が上映されているのですが。
その映像を観た瞬間に、すっかり気持ちが持って行かれてしまいました。
これは、実際にサグラダ・ファミリア聖堂に行かなきゃダメだと(笑)。
なお、その素晴らしい映像のすぐ後に、こんなものが展示されていました。
アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂 2本腕十字架の雌型》 1920~26年頃 サグラダ・ファミリア聖堂
小っちゃ!!
あまりにちっこくて、素通りしそうになりましたが、
キャプションによれば、《サグラダ・ファミリア聖堂、2本腕十字架の雌型》とのこと。
ただの石ころのようにしか見えませんが、
こちらは、ガウディ自身の手で制作されたもののようで。
サグラダ・ファミリア聖堂に使用する十字架を、
どのようにイメージしていたのかを伝える超大切なものなのだとか。
しかも、日本初来日の貴重な品なのだそうです。
大切なものほど目に見えない。
そんなことに気づかされました。
┃会期:2023年6月13日(火)~9月10日(日)
┃※会期中一部展示替あり
┃会場:東京国立近代美術館 (その後、滋賀→愛知と巡回予定)
┃https://gaudi2023-24.jp/