今年もこの季節がやってきました!
そう、板橋区立美術館の夏の風物詩、
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
イタリアの古都ボローニャで毎年春に開催される児童書専門の見本市、
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア主催の児童書のイラストを対象にした国際コンクール。
それが、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展。
子どもの本のために描かれた作品(5枚一組)であれば、誰でも応募可能。
ベテランも新人も同じテーブルに並べられて審査されるため、
そういう意味では、新人イラストレーターの登竜門的な位置づけとなってます。
3年ぶりの開催となる2022年は、
過去最多となる3873件がエントリーし、話題となりましたが、
2023年はそれを大きく上回る4345件ものエントリーがあったそう。
会場には、そんな激戦を制し入選した27か国79人(組)の作品が展示されています。
毎年、ボローニャ国際絵本原画展を訪れていますが、
今年一番印象的だったのが、中国勢の健闘ぶりでしょうか。
79人(組)中、実に12人が中国の作家でした。
個人的に“お、イイな♪”と思って、
キャプションに目をやると、大体が中国の作家。
しかも、いい意味で、中国っぽくない作風のものが多かったです。
僕らが思っている以上に、中国はグローバル化しているのかも。
そんな気さえしました。
もちろん、日本人の作家も今年も大健闘。
あお木たかこさんを含む5人が入賞しています。
個人的に一番惹かれたのは、
さぶさちえさんの『いつもとちがった日』です。
モノクロの世界観。
墨やインクで描かれているのかと思いきや、
すべて切り絵で表現されているとのことでした。
印刷になってしまうと、さすがにその細かいニュアンスは伝わりません。
これぞ、原画を展示する原画展ならではの醍醐味です。
さてさて、他に印象的だった作品をいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、スロヴァキアのペトロネラ・ドスタロヴァによるこの作品から。
タイトルは、『ロイヤルファミリーと車』とのこと。
「チャールズ国王とアストン・マーティン」とか。
「フィリップ殿下とランドローバー・ディフェンダー」とか。
文字通り、ロイヤルファミリーと車がセットで描かれています。
どういう需要があって生まれた絵本なのか。
気になって気になって仕方ありません。
あと、基本的に右ハンドルなのも気になるところです。
どこに需要があるの?といえば、
ラトヴィアのアレクサンドラ・ルンデによるこちらの絵本も。
タイトルは、『もしも町でたったひとり、裸になったら?』です。
そんなあり得ない問いに対し、
「できるだけ早く、こっそり家に帰ろう」だの、
「馬にまたがり、夕日を見よう」だのと、ルンデは提案しています。
中でも衝撃的だったのが、この1枚。
「知らんぷりで、ケーキを買おう」というもの。
よく見ると、右上のほうに、ケーキを食べる裸の女性がいます。
そして、周りの人はジロジロ見ています。
ケーキ屋で裸、ダメ。ゼッタイ。
また、2023年という時代を最も感じさせられたのが、
ユリヤ・ツヴェリチナによる『戦争日記』という作品です。
ウクライナ出身の作家による作品。
描かれているのは、もちろん今も続いている戦争の状況です。
戦争の悲惨さが直接的に描かれているだけでなく、
子どもと遊ぶ母親や戦況をスマホで撮影する若者など、
何気ない姿が描かれていることに、この状況が日常になっている怖さも感じました。
ただ、その一方で、2020年に本当は行うはずだった・・・・・
特集展示“触って「視る」ボローニャ展”が、
今年2023年になって、ついに解禁されていました。
コロナに関しては、こうして少しずつ日常を取り戻しているようです。
ちなみに。
板橋区立美術館の夏の風物詩といえば、もう一つ。
毎年この季節になると、美術館脇ののぼり旗が新調されます。
今年も新たなものに新調され、こんな言葉が掲げられていました。
確かに、どの駅から向かったとしても、
板橋区立美術館までは遠いのですが。
こんな風に労われてしまったら、何も言えません。