Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

北斎 大いなる山岳

$
0
0

現在、すみだ北斎美術館で開催されているのは、“北斎 大いなる山岳”という展覧会。

葛飾北斎やその門人が描く「山」に着目した展覧会です。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

すみだ北斎美術館ではこれまでに、

北斎や門人が描く「動物」や「花」、「鳥」、

あるいは「生業」に着目した展覧会が開催されてきました。

それゆえ、今回の展覧会も、まぁ、そういった流れで、

 

“北斎と言えば《冨嶽三十六景》だし、山ってテーマはどうよ?”

 

くらいのノリで企画された展覧会なのかと思っていたのですが・・・。

会場入り口に入った瞬間、こんなキャプションが目に飛び込んできました。

 

 

 

どうやら登山好きの学芸員さんにより、

企画されたガチの展覧会であるようです!

しかも、現地レポートまであるとのこと。

これは期待が高まりますね。

 

さてさて、展覧会ではもちろん、

北斎の代名詞というべき《冨嶽三十六景》シリーズが紹介されています。

 

 

 

しかし、北斎が描いた山は富士山だけにあらず。

北斎は、御殿山や愛宕山といった江戸の街中にあった山や、

富士山と並んで大きな信仰を集めた伊勢原の大山なども描いています。

 

 

 

さらに、関東地方を大きく飛び出して、

中部や近畿の山、さらには中国地方の山も描いていました。

 

 

 

北斎=富士山。

この展覧会を通じて、いい意味で、その印象が大きく払しょくされました。

北斎に対するイメージをアップデートできる展覧会です。

 

なお、“日本全国の山をそもそも知らないからなぁ・・・”という方でもご安心を。

作品の脇には、北斎が描いた山についてのキャプションも添えられています。

登山好き学芸員さんの登山熱が大いにこもっているため、

時には作品解説よりも、情報が溢れていたものもありました(笑)

また、冒頭で予告されていた「登山好き学芸員の現地レポート」ですが。

 

 

 

あって5~6コ、多くても10コくらいだろうと、予想していましたが、

それを大きく上回って、出展作品半数以上に現地レポートが添えられていました。

東は栃木県から、西は長崎県まで。

オープニングの『サザエさん』ばりに、日本中を巡られているようでした。

この学芸員なくして、この展覧会は成り立ちません。

浮世絵鑑賞だけでなく、登山気分も味わえる展覧会でした。

星星

 

 

ちなみに。

登山好き学芸員の現地レポートによって、詳らかになったのが、

《冨嶽三十六景》の中でも有名な《尾州不二見原》に関する意外な事実です。

 

《冨嶽三十六景 尾州不二見原》 すみだ北斎美術館(前期展示)

 

 

この桶の奥に見えている富士山は、実は富士山ではないのだとか。

というのも、この絵の舞台となっている名古屋からは、富士山は見えないそうで。

おそらく、富士山に似た形の南アルプスの聖岳を誤認した可能性が高いのだとか。

会場では、現地の写真を交えたレポートが発表されていました。

 

また、もう一つ明らかになったのが、

北斎が風景を描く際に、実際よりも盛りがちという事実。

例えば、こちらは現在の北区にある飛鳥山を描いた一枚。

 

《勝景雪月花 東都飛鳥の花》 すみだ北斎美術館(前期展示) 

 

 

飛鳥山に行ったことがある方なら、

おわかりでしょうが、実際はこんなに高低差はありません。

 

また例えば、こちらは奇岩で知られる榛名山を描いたもの。

 

《勝景奇覧 上州榛名山》 すみだ北斎美術館(通期展示)

 

 

いくらなんでも奇岩にもほどがあります。

奇岩というか、終盤のジェンガのようです。

 

 

ちなみに。

そんな師匠の気質を受け継いでしまったのでしょう。

北斎の初期の門人、昇亭北寿が香川県の象頭山を描いているのですが・・・。

 

昇亭北寿《象頭山》 すみだ北斎美術館(前期展示)

 

 

実際の象頭山よりも、だいぶ象感が強かったです。

完全に象に寄せに行っていますね。

 

 

なお、その隣に展示されていたのは、

北斎の別の弟子、魚屋北溪によって描かれた長崎県の風景。

 

魚屋北溪《諸国名所 肥前稲佐山》 すみだ北斎美術館(後期展示。前期はパネルでの展示)

 

 

蒸気どんだけ?!

 

もくもく、というよりは、もこもこ。

泡立っているようにも見えます。

ビオレのボディソープでも使ったのでしょうか。

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles