昨年2月、千葉県西船橋に、
千葉らしからぬオシャレなギャラリーがオープンしました。
その名は、Kanda & Oliveira。
都内で不動産を手がける株式会社西治の代表取締役、
神田雄亮さんディレクターを、フランス人のOliveiraさんがマネージャーを務めています。
ちなみに。
ノコギリ型の屋根が特徴的なこちらの建物を設計したのは、
若手の注目株とされる小室舞さんが率いる建築集団「KOMPAS」。
どの展示空間も、美術ギャラリーには珍しく、
自然光が自然に差し込むように設計されています。
さて、そんなKanda & Oliveiraで現在開催されているのが、
“Tiles | Signals ─ unexpected dimensions”という展覧会。
美術家の坂本夏子さん(1983年生)の実に4年ぶりとなる個展です。
坂本夏子さんといえば、三宅砂織さんや中谷ミチコさん、清川あさみさん、
そして、齋藤芽生さんが受賞した当たり年のVOCA展2010で奨励賞を受賞されたお方。
それ以降も、数多くのグループ展に参加している実力派アーティストです。
今展には、そんな坂本さんがこの4年の間に、
黙々とアトリエで作り続けていた作品、約100点(!)が一挙大放出されています。
彼女の作品が何を表しているのか?
何を表現しようとしているのか?
正直なところ、わかりませんでした。
ただ、彼女なりに何かを目指して、
実験を繰り返しているのであろうことは、ひしひしと伝わってきました。
例えば、こちらの床に置かれた作品。
こちらが完成するまでの過程も、
隠すことなく、併せて紹介されています。
なるほど。
この不思議な曲線は、女性の身体が原型となっていたのですね。
また、エヴァカラー(?)が印象的なこちらの巨大な平面作品。
その対面には、こちらの作品が展示されていました。
よくよく観比べてみると、平面作品の黒い部分と、
右側の小さな作品に描かれたアイスのスプーンみたいなのは、同じ形をしています。
なお、これはアイスのスプーンではなく、坂本さんの指の形とのこと。
何はともあれ、作品はそれぞれ独立しているのでなく、相関関係にあるようです。
この作品から、この作品に発展して・・・と、
連想ゲームのように楽しめる展覧会となっていました。
ちなみに。
展覧会のハイライトともいうべき作品が、こちらの3点の平面作品です。
どれもここ最近に描かれたものだそうですが、
指摘されなければ、同じ作者とは思えませんでした。
坂本さんは絶えずアップデートを続けているようです。
なお、それぞれの平面作品に辿り着くまでに、
坂本さんがどのようなプロセスを経たのかも、余すことなく紹介されています。
まるで坂本さんの頭の中を覗いているような。
不思議な感覚になりました。
この展覧会を通じて、何よりも感じたのは、
坂本さんほどの実力のあるアーティストでさえ、
世界を掴み切れていないのだろうなァということ。
これは決してディスっているわけではなく、いい意味で。
これまで、なんとなく、芸術家は自分よりも高い位置にいて、
芸術家は、僕ら一般人が掴めない世界を、作品という形で見せてくれている印象がありました。
しかし、坂本さんほどのアーティストが、見えない世界を形にしようと、
あぁでもないこうでもないと、これだけ奮闘している姿を観て、ホッとしたと言いましょうか。
芸術家も僕らと同じ人間なんだと、安心しました(笑)
と同時に、例え世界がなかなか掴めなくても、
制作活動を続けるアーティストの業のようなものも感じましたし、
そこまでして掴みたいものがあるということに希望の様なものも感じました。
↑文章で上手く伝えられた気がしないのですが、
とにかく、この展覧会を観に行って良かったです。
ちなみに。
坂本さんを見習って、たまには、こういうのもアリかと、
今日の記事は実験的にお笑い要素少なめで書いてみました。