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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―

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この10月にめでたく開館10周年を迎える岡田美術館。

それを記念して、今年2023年の岡田美術館では、

これまでに開催された展覧会の中で特に人気が高かった4人の画家を、

2人ずつ紹介するスペシャルな展覧会が2部構成で開催されています。

6月4日まで開催されていた第1部は、

伊藤若冲と田中一村をマッチングさせた展覧会でした。

 

 

 

そして、6月11日から始まった第2部では、

“歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―”と題して、

喜多川歌麿と葛飾北斎という2大人気浮世絵師がマッチングを果たしています。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

この特別展の見どころは何と言っても、《芸妓図》を含む・・・・・

 

喜多川歌麿《芸妓図》 江戸時代中期 18~19世紀 岡田美術館蔵

 

 

岡田美術館蔵の歌麿の肉筆画3点すべてが展示されていること。

ただし、2012年に再発見され、大きな話題となった、

歌麿の幻の大作《深川の雪》の実物が展示されるのは、

作品保存の関係上、9/8~12/10までとなっています。

 

喜多川歌麿《深川の雪》 享和2~文化3年(1802~06)頃 岡田美術館蔵

(その期間中以外は、高精細複製画が展示されています)

 

 

そう聞いて、「えっ?3点?少なくない??」と思った方もいらっしゃることでしょう。

いえいえ、現存する歌麿の肉筆画は、

実は世界でも約40点しか確認されていないのです。

そういう意味では、浮世絵界のフェルメールと言っても過言ではありません。

3点しか展示されていないのではなく、3点も展示されている世界的にも貴重な機会なのです。

 

ちなみに。

《芸妓図》《深川の雪》も良いですが、

個人的にオススメなのは、《三美人図》です。

 

喜多川歌麿《三美人図》 江戸時代中期 18世紀 岡田美術館蔵

 

 

描かれているのは、三人の遊女。

出勤準備が整った2人に対し、

左下の女性は、まだ支度が出来ておらず、

お得意様への手紙を書いているようです。

現代に置き換えるならば、キャバ嬢の営業メール中といったところでしょうか。

自他共に認める美人画の名手だった歌麿は、

普段決して見せることのない、こうした花魁の日常の姿、

オンではなくオフの姿も、生き生きと描いていたようです。

ドガがバレリーナの舞台裏やリハーサルの様子など、

あえてプライベートの姿を描いていたのに、どこか通ずるような。

そういう意味では、浮世絵界のドガと言っても過言ではありません。

(↑フェルメールだったり、ドガだったり)

 

さて、そんな歌麿と相対するのは、

「世界のHOKUSAI」こと葛飾北斎です。

今展では岡田美術館が収蔵する北斎の肉筆画10点がすべて展示されています。

 

葛飾北斎《雪中鴉図》 江戸時代 弘化4年(1847) 岡田美術館蔵

 

 

北斎が美人画を描くイメージは、

一般的にはあまり持たれていないかもしれませんが。

実は意外にも、北斎は美人画の肉筆画を多く残しています。

 

葛飾北斎《傾城図》 江戸時代後期 19世紀前半 岡田美術館蔵

 

 

その中でも屈指の名品とされるのが、こちらの《夏の朝》です。

 

葛飾北斎《夏の朝》 江戸時代後期 19世紀初頭 岡田美術館蔵

 

 

鏡に写った女性は、お歯黒をつけているものの、眉は剃っていません。

そのことから、子どもを産んでいない若妻であることがわかるのだとか。

また、画面の右上に男性の着物が描かれています。

これはすなわち、その奥でまだ夫が寝ているということ。

夫が起きてくる前に早起きして身支度する。

つまり、新婚夫婦の幸せな場面を描いた一枚なのです。

リア充め。

 

 

そんな歌麿と北斎の作品を中心に紹介しつつ、

展覧会では他にも、円山応挙や長澤芦雪といった同時代の絵師の作品や、

美人画繋がりで、鏑木清方や上村松園などの美人画も紹介されています。

まさに10周年をお祝いするに相応しい豪華ラインナップの展覧会です!

星星星

 

なお、第1部に引き続き、誕生日当日のご本人と、

その同伴者1名まで無料という、太っ腹なキャンペーンを実施中。

展覧会期間中に誕生日を迎える方、

もしくは、迎える方が身近にいらっしゃる方は、

是非、この機会に岡田美術館に行かれてみてくださいませ。

 

 

ちなみに。

相変わらずですが、特別展以外にも、美術館全体の展示が充実していました。

特に4階展示室での特集展示、“五彩-明の景徳鎮窯を中心に-”はお見逃しなきよう!

五彩とは、白磁に赤や緑、黄などで絵付けしたもので、

明・清時代のやきものの主役を飾る華やかな技法のこと。

今展では、初公開2件を含む岡田美術館蔵の五彩の名品20件が一挙展示されています。

その中でも特に見逃せないのが、景徳鎮窯の《五彩百蝠文壺》

 

《五彩百蝠文壺》 景徳鎮窯 中国明時代 万暦年間(1573~1620) 岡田美術館蔵

 

実際には88匹だそうですが、デジモンを想起させる(?)、

色とりどりの蝙蝠が壺全体にびっしりと描き込まれています。

 

 

 

88匹の蝙蝠の中でも特にレアなのが、白い蝙蝠。

なんでも、古代の中国では、

千年生きた白い蝙蝠を食べると、

寿命が伸びると考えられていたのだとか。

千年も生きたのに、最終的に人間に食べられてしまうなんて。

バッドエンドにもほどがあります。

長生きはほどほどに。

 

 

 ┃会期:2023年6月11日(日)~12月10日(日)
 ┃会場:岡田美術館
 ┃https://www.okada-museum.com/exhibition/

 

 

 


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