■ひとはけの虹
漫画:Cuvie
出版社:講談社
発売日:2015/8/7(1巻)、2015/12/9(2巻)、2017/4/7(3巻)
ページ数:206ページ(1巻)、200ページ(2巻)、235ページ(3巻)
この物語は、一刷毛(ひとはけ)で虹の輝きを描き出す画家たちと、
その美で描き手に天啓を与えるミューズたちが紡ぎだす絵画譚である。
中世西欧から様々な時代を舞台に繰り広げられる、裸婦vs.画家の一騎打ち。
不世出の画家が力の限りを尽くし、「女性美」を描き上げる時、虹の輝きが放たれる。
輝きの元は、“神の石”オリハルコン。
そして、かの石を携えた、謎の探究者の正体とは!?
「女性美」を巡る“出色”絵画譚、ついに開幕。
(講談社公式HPより)
「クラナッハやカラヴァッジオ、ベラスケスなど、
実在の美術界の巨匠が多数登場するコミックです。
テーマは、女性美。
モデルの女性をいかに美しく描くか。
それも、官能的に。
やたらと、裸の女性が多く登場するなァと思ったら、
作者のCuvieさんは、成年コミックでも活躍されている方なのだそう。
なるほど。納得。
とりあえず、電車内で読まなくて正解でした。
各話によって、舞台となる場所や時代も異なるものの、短編集ではありません。
ラファエロと名乗る謎の青年が、さまざまな画家たちに、
“ひとはけ”塗るだけで、“虹”色に輝く顔料となる伝説の鉱石、
オリハルコンを渡していく、というのが基本的な流れです。
さて、ここからはネタバレを含みます。
のちに明らかになるのですが、
謎の青年ラファエロの正体は、若き日のラファエロ・サンティ。
なぜ、彼はタイムスリップをすることができるのしょうか。
その理由も、のちに明らかになります。
なんとダ・ヴィンチが持っていたタイムスリップ装置を使っていたのです。
んなアホな!
いくらダ・ヴィンチが万能の天才とはいえ、
それはちょっと、いくらなんでも内容がぶっ飛びすぎているような。
しかも、物語の前半では、芸術家がもがきながらも、
いかに女性を美しく描いてきたか、が主題となっていましたが。
後半になると、38歳で生涯を閉じたカラヴァッジョや、
フェルメールと同時代に活躍した夭折の天才カレル・ファブリティウスを、
早死にさせないよう、ラファエロが奮闘するという展開に。
気づいたら、タイムリープの王道漫画へと内容が変化していました。
美術が主体だった前半が、それなりに面白かっただけに残念です。
個人的に印象に残っているのは、
切り裂きジャックの容疑者ともされる画家、
ウォルター・リチャード・シッカートの葛藤を描いたエピソードと、
グイド・レーニによる肖像画でも知られるベアトリーチェ・チェンチのエピソード。
パステル画の名手として知られるモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールと、
ルイ15世の公妾ポンパドゥール侯爵夫人の関係を描いたエピソードは出色。
この話をもっと掘り下げて、1冊の漫画にすれば良かったのに。
(星3つ)」
~コミックに登場する名画~
モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール《ポンパドゥール侯爵夫人の肖像》