現在、東洋文庫ミュージアムで開催されているのは、“東洋の医・健・美”という展覧会。
こちらは、東洋文庫が所蔵する医療史の名著の数々を紹介する展覧会です。
・・・・・・・とはいったものの。
展覧会の冒頭で紹介されていたのは、明らかに書籍ではない何やらでした。
こちらは、いわゆる甲骨文字が表面に刻まれた甲骨卜辞片です。
実は、古代中国の殷の時代には、
治療に関することは、占いで決めていたのだとか。
その後、紀元前3世紀頃の書籍に、
内科医や外科医といった職業が記されていることから、
少なくともその時代には、占いに頼るのは止めたものと思われるそう。
占いをまったく信じていないわけではないですが、
医療がなんとかなるくらいに占いが当たる時代だったのなら、
そもそも病気になる前に、その占い師には予防をしてほしいものです。
また、中国の医学書の中にはこんなものも。
左は2世紀末に誕生した『傷寒論』、
右が1642年に発刊された『温疫論』です。
ざっくり言うと、『傷寒論』は風邪に対する治療法、
『温疫論』はウイルスに対する治療法が書かれているのだとか。
なお、『傷寒論』の中で風邪に効果的な漢方薬として紹介されているのが、葛根湯とのこと。
葛根湯って、そんなに昔からあったのですね。
ちなみに。
中国関連の展示品の中で最も印象に残ったのが、「導引図」。
20世紀に湖南省で発見された前漢時代の墓から、
ミイラや木簡、医療に関する絹に書かれた書物や図など発掘されたそうで。
その中に「導引図」と呼ばれる中国最古の体操の絵が含まれていたそうです。
それが、こちら↓
・・・・・と言っても、絹がボロボロでよくわからないですね。
復元されたものも併せて展示されていました。
絵だけでは、実際のところ、
どんな体操だったのかはわかりませんが。
おそらく、キビキビした動きではないことは確か。
たぶん、太極拳みたいな動きの体操なのでしょう。
さて、展覧会ではもちろん、日本の医学書も紹介されています。
それらの中には、山脇東洋のよる日本初の解剖書『蔵志』や、
世界で初めて全身麻酔による乳がんの手術を成功させた華岡青洲の『乳岩図説』など、
日本の医学史に残る貴重な医学書が数多く含まれています。
さらに、医学史どころか日本史の教科書でお馴染みのあの医学書も。
そう、『解体新書』。
杉田玄白や前野良沢らによって、
日本で初めて本格的に翻訳された西洋解剖学書です。
もちろん本物。
そして、その隣には・・・・・
元ネタとなった『ターヘル・アナトミア』も展示されていました。
こちらも、もちろん本物。
さらに、もう一つ隣り合って展示されていたのが、
スペインの解剖学者ワルエルダによる解剖書『人体解剖図詳解』です。
実はこちらは、『解体新書』のもう一つの元ネタ本。
この本の扉絵が、『解体新書』の扉絵のモデルとされているのだとか。
今展では、2つの扉絵を見比べることができます。
これはもう完全にやってますね。
著作権という概念が無かった時代だから良いものの、今なら100%アウトです。
なお、今回紹介されている医学書の中で、
もっとも貴重といえるのが、こちらの『十四経発揮』です。
もとは、中国元時代の医者・滑寿によってまとめられた鍼灸治療の教科書。
こちらは、1604年に京都で刊行されたもので、現在伝わる最古の版なのだそうです。
なお、この版は東洋文庫以外での所蔵は知られていないとのこと。
実は超貴重な一冊なのです。
ちなみに。
今展には書籍以外に、東洋文庫研究員蔵の健康アイテムも展示されていました。
その中で特に気になったのが、こちらの緑宝石の指輪(レプリカ)です。
緑宝石は健康増進に有益と考えられ、珍重されてきたそう。
そこで、この指輪を10本の指すべてに嵌めていたそうです。
どういうセンスだよ。
健康のために、何か別のものを失うような気がします。
それから、もう一つ印象に残っているのが、
19世紀の中国で健康のお守りと考えられていたこちらのアイテム。
ヒスイ製の美顔ローラーです。
美顔ローラーって、そんな昔からあったのですね!
しかも、中国に!