現在、東京オペラシティアートギャラリーでは、
“野又穫 Continuum 想像の語彙”が開催されています。
デビューから一貫して、架空の巨大建築物を描き続ける画家、
野又穫(のまたみのる)さんの美術館では久しぶりとなる大規模な個展です。
“こんな建築物は、現実にはあるわけないよね”
そう、頭では理解しているのですが、心のどこかでは、
“いや、でも、かつて、どこかでこんな建築物を見たような・・・・・??”
と、デジャヴのようなものを感じずにはいられない。
それが野又穫ワールドです。
決して派手な作品ではないですが、
一度目にしたら忘れられない静かなインパクトがあります。
そんな野又さんはこれまで、
「知る人ぞ知る」存在として、熱心なファンから注目を受けていました。
ところが、2020年、野又さんに大きな転機が訪れます。
なんと、ダミアン・ハーストやアントニー・ゴームリーらが所属する、
イギリスのアートシーンを代表するギャラリー、ホワイト・キューブに、
日本人として初めて所属されることになったのです。
そう、野又さんは今や、「知る人ぞ知る」存在から「世界のNOMATA」へ。
その所属のきっかけとなったのが、
2004年に東京オペラシティ アートギャラリーで開催された野又穫展。
その展覧会をホワイト・キューブの現ディレクターが当時たまたま観ていたのだとか。
つまり、今回の野又穫展は、
その凱旋展のようなものと言っても過言ではありません。
国内の美術館でもっとも野又穫作品を所蔵している東京オペラシティ アートギャラリー。
今展ではそれらの所蔵品約40点にくわえて、
個人蔵や企業蔵の作品も併せた約90点が出展されています。
その中でも特に注目したいのは、80年代の初期の作品です。
この頃は立体作品も制作していたようで、
会場では立体作品も併せて紹介されていました。
また、近年の野又さんの描く空想の建築物は、
どこか近未来の建造物を想像させるものがありますが。
80年代の野又さんが描いていた空想の建築物は・・・・・
どことなく遺跡のようで、近未来感はなく、
過去の世界が描かれている印象を受けました。
空想の建築物は空想の建築物でも、ベクトルは真逆。
こうして初期作から最新作まで展観されたことで、
野又さんの作風が実はこの約40年の間に何度も変わっていることが見て取れました。
ちなみに。
こちらが2023年に描かれた新作です。
特徴的だったのは、画面がより縦長になっていたこと。
そのため、掛軸を想起させるものがあり、
描かれている建造物自体は、近未来的なのですが、
画面全体から受け取る印象は古美術的といいましょうか。
未来のようでもあり、過去のようでもあり。
もはや、そういった概念に捉われない、
時空を超えた存在になっていたように思います。
野又さんは今なお進化し続けているようです。