およそ1年にわたって、設備改修工事のため、
長期休館していた東京富士美術館が、先日ついに再オープン。
ということで、早速、足を運んでまいりました!
約1年ぶりに訪れたら・・・・・
新館の出入り口に、ブールデルの彫刻作品が設置されていました。
しかも、ロゴも変わっていました。
さらに、館内には「和のスペース」なるものが誕生。
伝統的な宮大工の木組みの技ですべて造作されたスペースとのことです。
さらにさらに、常設展示もパワーアップ!
絵画だけでなく、当時の調度品も設置されたことで、
展示空間がより華やかで、ゴージャスな雰囲気となっていました。
また、東京富士美術館がイタリアに寄贈した国宝級の絵画、
レオナルド・ダ・ヴィンチにまつわる幻の板絵《タヴォラ・ドーリア》も久しぶりに里帰り。
これから4年近く、日本に滞在するそうです。
まだ現物を観ていない方、
久しぶりに再会したいという方、
是非、このチャンスをお見逃しなきように!
さて、そんな新生東京富士美術館では現在、
東京富士美術館が所蔵する写真コレクション、
その総数、な・な・なんと約2万点(!)の中から、
選りすぐりの写真作品を通して、写真史の系譜を紹介するものです。
紹介されている写真作品の中には、
19世紀に肖像写真家として活躍したナダールや、
ダダイストでシュルレアリストのマン・レイ、
伝説の戦場カメラマン、ロバート・キャパや、
国際的に活躍する杉本博司さんの作品も含まれています。
まるで写真史の教科書を観ているような、
写真史200年をギュッと凝縮したような大充実の展覧会でした。
しかも、これが国内外から搔き集めてきたわけでなく、
1館の美術館のコレクションだけで成立しているだなんて!
東京富士美術館の実力を、とことん魅せて頂きました。
さて、この記事を読んでいる方の中には、
「写真<絵画」と思っている方もいらっしゃることでしょう。
実際、写真が発明された当時は、その風潮がもっと強かったようです。
それゆえ、初期の写真は、絵画に近づくべく、
むしろ、絵画以上に絵画的な仕上がりを目指していました。
そういう意味では、初期の写真が多く展示された今展は、
写真ファン以上に、絵画ファンにオススメの展覧会といえそうです。
なお、そんな初期の写真の数々の中で、
今回の展覧会で特に目玉というべき作品が、
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの写真群です。
政治家であり、考古学者であり、語源学者であり、発明家でもあったタルボット。
彼は写真技術の先駆者の一人で、カロタイプと呼ばれる、
1枚のネガ画像から、複数のポジ画像(プリント)が得られる、
当時としては、とても画期的な方法を発明した人物です。
(写真技術の祖とされるダゲレオタイプは、一度の撮影で1点のポジ像しか得られなかった)
ちなみに。
タルボットがこの技術を発明するきっかけとなったのは、新婚旅行での出来事だったそう。
夫婦2人で仲良く旅先のイタリアの風景をスケッチしたそうなのですが、
悲しいかな、タルボットは絵心がなく、実に残念な仕上がりになってしまったそうです。
そこで名誉を挽回すべく、絵を描かずとも、
目の前の風景をそのまま定着させる方法はないかと、
研究に研究を重ねた結果、カロタイプを発明するに至ったのだとか。
もし、タルボットに絵心があったら、写真の発展は遅れていたかもしれないのですね。
なお、展示室の冒頭では、
タルボットの写真の複製が展示されていましたが。
展覧会のラストでは、超貴重なヴィンテージ写真6点が、
週替わりで1点ずつ(それぞれ6日間限定)で展示されています。
タルボットの写真は、たとえ所有者であっても、
権利者の許可が下りなければ、公開できないそうで。
東京富士美術館でヴィンテージ写真が公開されるのは、開館以来初とのこと。
あまりにも貴重すぎて、展示ケースに入っているにも関わらず、
実際にヴィンテージ写真を目の当たりにした際は、思わず息を止めてしまいました。
これを観るためだけに、東京富士美術館へ行く価値は大いにアリです!
なお、タルボットの写真の他にも、貴重な写真が多々あります。
例えば、こちらは世界で初めて月の表面が映し出された写真。
また例えば、こちらは世界初の戦争写真です。
こちらもおそらく世界初の写真といえそうです。
撮影したのは、フランスの神経内科医ギヨーム・デュシェンヌ。
彼が撮影したこれらの写真は、
心理学や映画の表情表現の研究に大きな影響を与えたそうです。
なお、モデルが役者かなにかで、
あえてこういう大げさな表情をしているのかと思いきや、
表情筋に電気刺激を与えた様子を撮影した写真なのだとか。
世界初の電流ビリビリ。
世界初のリアクション芸(?)です。