現在、DIC川村記念美術館で開催されているのは、
“ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室”という展覧会。
ドイツ出身で、のちアメリカに移住した美術家、
ジョセフ・アルバース(1888~1976)の日本初の大規模な回顧展です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
画家として、デザイナーとして、
美術史に名を残すジョセフ・アルバースですが、
実は、美術の教育者としても美術界に大きく貢献しました。
30代の遅咲きでバウハウスに入学したアルバースは、
その後、バウハウスの教師となって基礎教育を担当します。
ナチスの弾圧により、バウハウスが閉鎖されると渡米し、
ブラックマウンテン・カレッジ、イェール大学を歴任しました。
そんなアルバースの教育者としての側面にも、
スポットを当てているのが、今展の最大の特徴。
© The Josef and Anni Albers Foundation
アルバースの研究作品や、彼が教えた学生の作品が多く展示されています。
© The Josef and Anni Albers Foundation
アルバースが教育者として、
もっとも重視していたのは、「目を開くこと」。
これは、「授業中は寝るな!起きろ!」ということではなく、
「色彩や素材の持つ特性をより深く追求しなさい」という意味の言葉です。
例えば、アルバース先生は、ある時、
学生たちに《リーフ・スタディ》という課題を与えました。
こちらは、木の葉と色紙を素材に、
その色彩や質感を追求し、作品を構成するというもの。
現代だったら、こういう情操教育はありそうな気もしますが、
この当時としては、それはそれは画期的な美術教育だったそうです。
ちなみに。
アルバース先生のユニークな美術教育の数々を知って、
実際にチャレンジしたくなる方も、中にはいらっしゃることでしょう。
そんな方々のために、今展では期間中、
常設でワークショップ・スペースが設けられています。
こちらでは全部で4種のアルバースの出した課題にチャレンジすることが可能。
完成した課題は、白い壁に貼ることも可能となっています。
難易度はわりと高めな印象でしたが、
ちゃんとヒントも用意されているので、ご安心を。
一度やり始めると、結構のめり込んでしまうので、
駅への送迎バスを利用される方は、時間を確認した上で、
ワークショップ・スペースに臨まれることをオススメいたします(←経験者は語る)。
また、アルバースといえば、正方形、
正方形といえば、アルバースというくらいに、
アルバースの代名詞ともいうべきが「正方形讃歌」。
正方形による決まったフォーマットに色彩を配置したシリーズ作品です。
© The Josef and Anni Albers Foundation
もちろん画家としての彼の仕事も、
今展ではたっぷり紹介されていますので、
「正方形讃歌」シリーズも、多数展示されています。
© The Josef and Anni Albers Foundation
展示されていた「正方形讃歌」の中には、
大きさは違えど、配色パターンがまったく同じものがあったり、
© The Josef and Anni Albers Foundation
よく見ると、一番外側の正方形が、
上下と左右の部分で色が違うバージョンのものがあったり。
© The Josef and Anni Albers Foundation
様々なタイプの「正方形賛歌」が紹介されていたおかげで、
アルバースが試行錯誤した様子を垣間見ることができました。
ちなみに。
アルバースが「正方形賛歌」に取り組み始めたのは、
イェール大学のデザイン学科長に就任した60代からのこと。
それ以来、20年以上にわたって、
約2000点の「正方形賛歌」を制作したそうです。
そんなにも長年にわたって、
しかも、2000回以上も賛歌されたら、
おそらく正方形のほうも「もうええわ!」となったことでしょう。