石橋財団コレクションと現代アーティストとの共演。
それが、ジャム・セッション。
アーティゾン美術館の学芸員とアーティストがコラボし、
新たな視点による展覧会をお届けする年に1度のスペシャル企画です。
これまでに鴻池朋子さん、森村泰昌さん、
そして、昨年は柴田敏雄と鈴木理策さんによるジャム・セッションが開催されました。
4回目となる今年セッションするのは、
現代美術界のトップランナー・山口晃さんです。
展覧会名は、“ここへきて1 やむに止まれぬ サンサシオン”。
果たして、どんな展覧会に仕上がっているのでしょうか?
まず、展覧会の冒頭で現れたのは、
山口晃さんによる新作インスタレーションでした。
タイトルは、《汝、経験に依りて過つ》。
画像で見る限りは、何の変哲もない
ただのバーのような空間に思われることでしょう。
しかし、この普通に見える空間で、
鑑賞者は普通でない体験をすることになります。
ネタバレしないよう、多くを語りませんが、
それはそれは、目眩を起こすような体験でした。
ヒントとして、空間の入り口の写真を掲載しておきます。
どんな体験ができるのか、気になる方は是非会場で!
さて、この他にも、展覧会では、
山口さんの新作インスタレーション作品が発表されています。
もちろん、新作の絵画も多く出展されています。
さらには、大河ドラマ『いだてん』のOPで使われた《東京圖1・0・4輪之段》や、
東京メトロ日本橋駅のパブリックアート《日本橋南詰盛況乃圖》の原画といった、
近年の代表作の数々も併せて展示されていました。
普通に山口晃さんの最新個展として、
見ごたえがありましたが、本展はあくまでジャム・セッション。
展覧会のメインとなるのは、やはり、
石橋財団コレクションと山口晃さんとのコラボです。
今回、山口さんがコラボ相手に選んだ作品は、
セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。
昔は良さが解らなかったとのことですが、
今は、セザンヌが大好きでたまらないそうです。
なお、展覧会タイトルにある“サンサシオン”も、セザンヌに由来するもの。
「感覚」という意味を持つフランス語で、
セザンヌが制作について語る時によく出てくる言葉なのだとか。
さて、《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》の向かいには、
今展のための描きおろし作となる《セザンヌへの小径》が展示されています。
《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》は、
アーティゾン美術館コレクションの中でも特に重要な作品。
それゆえ、2020年に開館して以来、
展示場所が変わることはあったものの、
一度として収蔵庫に戻ったことはないそうです。
そんな《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》を、
今回のジャム・セッションのために、模写したいと考えた山口さんは、
休館日のたびに計7回通い詰め、この作品を仕上げたのだそうです。
そうそう、模写と言えば、
基本的に国内の美術館では、模写が禁止されていますが。
このジャム・セッション展の期間中に限り、
山口晃さんの取り計らいで、鉛筆でのデッサンが可能となっています。
美術館で模写をしてみたかった!
そんな方は是非この貴重な機会をお見逃しなく。
《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》を模写するもよし、
セザンヌを模写した山口晃さんの《セザンヌへの小径》を模写するもよし、です。
なお、山口さんがもう一つのコラボ相手に選んだのが、雪舟の《四季山水図》。
山口さんらしい雪舟への考察と、
山口さんらしい解釈での新作をお楽しみに。
ちなみに、山口晃さんらしいといえば、
作品が完成していないまっさらな画面が多々ありました。
初日に作品がすべて完成していないのは、
もはや、山口晃さんの展覧会のデフォルト。
会期の中盤以降に訪れるのが、ベターかもしれません。