現在、世田谷美術館で開催されているのは、
“土方久功と柚木沙弥郎――熱き体験と創作の愉しみ”という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
世田谷美術館コレクションの中から、
共通点があるようで無いようで、やっぱりあるような、
2人の日本人芸術家にスポットを当てた展覧会です。
まず1人目に紹介されていたのは、土方久功(1900~1977)。
東京美術学校(現:東京藝術大学)で彫刻を学んだ人物です。
1929年から10年以上にわたって、
当時日本の委任統治領であったパラオ諸島で暮らし、
現地の人々や風景を主題とした彫刻、絵画を制作したことで知られています。
その作風から、「日本のゴーギャン」とも呼ばれていたようですが、
本家のゴーギャン(?)と違って、南の島で生涯を終えたわけではなく。
帰国した後には、一度岐阜県に疎開し、
終戦後に、世田谷区の豪徳寺にアトリエを構え、
76歳で亡くなるまで、その地で彫刻を制作し続けたそうです。
と同時に、パラオに関する書籍も多く著しており、
日本におけるパラオ研究に多大な貢献を残しました。
また、パラオを舞台にしたものを含めて、絵本も4冊ほど出版。
本展ではその原画の一部も紹介されていました。
ちなみに。
土方の代名詞ともいうべき、
木彫レリーフの作品もインパクトがありましたが。
個人的には、冒頭で紹介されていたブロンズ像のほうがお気に入り。
特にこちらの《猫犬》は謎の可愛らしさがありました。
猫なのか?はたまた、犬なのか?
南の島繋がりで、スティッチかもしれません。
さて、続いて紹介されていたのは、
100歳を迎えた今なお現役バリバリで、
活動を続けるレジェンド染色家・柚木沙弥郎さんです。
柚木さんと言えば、昨日の記事でご紹介しましたが、
ちょうど今、日本橋髙島屋S.C.でも展覧会が開催されています。
この2つの展覧会の期間が重なったのは、なんと偶然なのだそう。
しかも、日本橋髙島屋S.C.での展覧会では、
染織家として活動を始めた頃の初期の作品から、
2000年代に入る前の染織作品が紹介されているのに対して。
セタビでは、柚木さんが還暦を迎えた1982年から、
比較的ここ近年に作られた染織作品が紹介されています。
つまり、2つの展覧会を観れば、
柚木さんの染色家人生がちょうど辿れるわけです。
偶然とは思えない、あまりにも出来すぎた展開といえましょう。
なお、土方久功と同じく、
柚木さんの制作も実は多岐に渡っています。
本展では、そんな側面にもスポットを当て、
柚木さんによる立体作品(人形)を紹介したり、
柚木さんがお孫さんとともに始めたというクッキー屋、
「hana」のためのデザイン画を紹介したりしていました。
さらに、それらの創作の源泉ともいえる、
柚木さんのアトリエに置かれたさまざまな品、
例えば、西洋のアンティークや、船や飛行機などの玩具なども展示されていました。
これらのアイテムはすべて、
実際に柚木さんのアトリエに置かれている本物とのこと。
・・・・・・・・ん?そういえば??
日本橋髙島屋S.C.の展覧会では確か、
柚木さんがご自宅で愛用する民芸品の数々、
食器とか家具とかが、実際に展示されていましたっけ。
ご自宅からだけでなく、
アトリエからも愛用品がごそっとと持って行かれているとは。
展覧会に関わる美術関係者の皆様、
これ以上、柚木さんから愛用品を取り上げないであげてください(笑)