現在、トーハクこと東京国立博物館の表慶館では、
トーハクの歴史上初となる現存作家の個展が開催されています。
その名も、“横尾忠則 寒山百得”。
こちらは、87歳を迎えた今もなお現役バリバリの、
現代アート界のレジェンド・横尾忠則さんの最新個展です。
展示されているのは、「寒山拾得」シリーズ。
コロナ禍より描き始められた完全新作となるシリーズです。
モチーフとなっているのはすべて、寒山拾得。
中国・唐時代に生きた伝説的な2人の僧、寒山と拾得です。
奇行が多かったという2人ですが、
その奇行ぶりが、逆に(?)、神格化され、
中国や日本の絵師たちに多く描かれてきました。
そんな伝統的な画題に、横尾さんも挑むことに。
しかも、せっかくならば、と、
拾(=10)ではなく、百点描いてみようと決めたのでした。
だから、展覧会のタイトルが、“寒山百得”なのですね。
さてさて、描き始めた当初の「寒山拾得」はこんな感じでした↓
伝統的に、寒山は巻物を、拾得は箒を手にしていることが多いですが、
横尾忠則流の寒山はトイレットペーパーを、拾得は掃除機を手にしています。
現代流にアレンジされ、オリジナリティは十分にありますが、
まだ、ちゃんと寒山拾得の原型は留めているように思えます。
しかし、さすがに毎日描き続けるとなると、飽きてしまったのでしょう。
空飛ぶじゅうたんに乗った寒山拾得や、
ハリーポッター風に箒にまたがる寒山拾得といった・・・
本家を無視したシチュエーションの寒山拾得が次々と登場するように。
さらには、マネの《草上の昼食》や久隅守景の《納涼図屏風》といった・・・
古今東西の名画をパロディした寒山拾得も誕生しました。
挙句の果てには、こんなことに↓
どこに寒山拾得がおんねん!!
もはや2人組どころか、
団体が描かれた「寒山拾得」シリーズも出てくる始末。
ルール無視にもほどがあります(笑)。
その後も、アルセーヌ・ルパンになったり、
ランボー、あるいは、江戸川乱歩になったり。
そして、最終的には・・・・・・
寒山拾得の影も形もない謎のキャラが爆誕していました。
このコロナ禍で、どれだけ作風が変化したのか?!
間違いなく、コロナウイルスよりも、
横尾さんの寒山拾得のほうが変異していました。
そして、何よりも、寒山拾得以上に、
横尾忠則さんの奇行が目立つ展覧会でした(笑)
ちなみに。
“横尾忠則 寒山百得”の開催に合わせて、トーハクの本館では、
“東京国立博物館の寒山拾得図”という特集展示が開催されています。
こちらは文字通り、トーハクのコレクションの中から、
寒山拾得をモチーフにした作品の数々を紹介するものです。
やはり、昔から寒山拾得モチーフは人気だったようで、
美人画で人気を博した浮世絵師・鈴木春信もこんな作品を制作しています。
左側の女性が手にしているのは巻物ではなく、恋文だそうですが、
当時の人はこの絵を観て、すぐに寒山拾得だとピンと来たのでしょう。
ウィットに富んでいて、素敵ですよね。
と、それはさておき、気になってしまうのが、女性の細さです。
特に左の女性。
ガリガリっていうレベルではありません。
パッと見、カカシかと思いました。
また、こちらの展示では、唯一の国宝となっている寒山拾得図、
因陀羅筆、楚石梵琦賛の《寒山拾得図(禅機図断簡)》も特別に公開されています。
2人とも髪の毛が、もふもふです。
いや、もふもふを通り越して、
もはや気体のようになっています。
もふもふ、ではなく、もやもや。