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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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濱野年宏 伝統と現代のハーモニー

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2021年11月にオープンした丸紅ギャラリー。

開館から約2年間、4回にわたって、

そのコレクションをお披露目する開館記念展が開催されてきましたが。

5回目にして初となるコレクション以外の、

作品を紹介する展覧会が開催されています。

その名も、“濱野年宏 伝統と現代のハーモニー”

85歳を迎えた今もなお現役で活躍する、

香川県在住の芸術家・濱野年宏さんの最新個展です。

 

 


お恥ずかしながら、濱野年宏さんのことは存じ上げず。

85歳の芸術家とだけ聞いて、

きっと「ザ・伝統」的な作風なのだろう、

と、なんとなく思い込んでいたのですが。

いい意味で、その予想が裏切られました!

 

まず紹介されていたのは、茶室をモチーフにした近作のシリーズです。

 

 

 

モチーフこそ伝統的ですが、作風は実にスタイリッシュ!

あまりにスタイリッシュなので、

CGで描かれているのかと思ってしまったほど。

(実際は、和紙に墨、岩絵の具、アクリルで描かれています)

黒と白の対比を活かしたシンプルさと、

その独特な構図は、どこか小村雪岱を彷彿とさせるものがありました。

 

 

 

続いて紹介されていたのは、「桂離宮シリーズ」。

ドイツの建築家ブルーノ・タウトが、

「泣きたくなるほど美しい」と称賛した桂離宮を描いた作品群です。

 

 

 

茶室シリーズに輪をかけて、

どの作品もシンプルな印象でした。

ただ、シンプルだからといって、

決して、物足りないという感じではなく。

美を感じられる極限までに、

余計なものを削ぎ落した究極のシンプルさ、

泣きたくなるほどのシンプルでした。

 

なお、桂離宮をモチーフにした作品を、

さらに突き詰めたのが、こちらの最新作です。

 

 

 

一見すると抽象画のようですが、

これらは桂離宮の欄間や天井の一部を描いたもの。

そう言われてみれば、もちろんそう観えますが、

スタイリッシュなグラフィティのようにも思えました。

御歳のことを言うのもなんですが、

もし、これが20代の若者の作品と言われたとしても、

素直にそれを受け入れてしまうような気がします。

 

 

ちなみに。

今展のメインともいうべきが、

中宮寺が所蔵する《聖徳太子絵伝四季図大屏風》

 

 

 

春夏秋冬の草花図を背景に、

聖徳太子の生涯が描かれた大作で、

その総延長は、36メートルにも及びます。

なお、制作年数は、なんと15年!

まさに濱野さんの代表作というべき作品です。

2021年には、フランスのブルターニュで、

その翌年には、パリ日本文化会館で展示され、好評を博したそう。

今回はその凱旋展的な位置づけで、

特別に《聖徳太子絵伝四季図大屏風》のうち、

「春の部」と「夏の部」が、東京で初披露されています。

 

 


たぶんですが、これを逃したら、

おそらくこの作品を東京で目にする機会はもう二度とないでしょう。

なお、中宮寺に行ったからと言って、

この作品は随時観られるというわけでもない様子。

近々で公開されたのは2019年で、

9年ぶり3度目の公開だったそうです。

少しでも気になった方は、是非お見逃しなく!

星

 

 

ちなみに。

中宮寺からはこちらも同じく、

公開される機会がそうそう無いという、

《如意輪観世音菩薩キリク御像》も特別出展されています。

 

 

 

一見すると、ただの梵字(?)ですが。

近づいてよーく観てみると、その一部に、

中宮寺の本尊である国宝《如意輪観世音菩薩》のお顔が描かれています。

 

 

 

そういう作品とはゆめにも思っていなかったので、

最初は見間違いか何かかと思い、「ひっ!」と声を上げてしまいました。

いくら慈悲深いお顔の仏像とはいえ、

いきなり出くわしたら、恐怖が勝ってしまうようです。

 

 

 

 

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