現在、東京国立博物館の本館特別5室では、
“特別展「京都・南山城の仏像」”が開催されています。
南山城?みなみやまじょう?
そんなお城あったっけ??
と、疑問に思われた関東圏の方は少なくないことでしょう。
「南山城」と書いて、「みなみやましろ」。
京都府最南部に位置する木津川流域のエリアです。
奈良県に接しており、古くから往来が盛んであったことから、
この地には歴史あるお寺や文化財が数多く残っているのだとか。
そんな南山城に伝わる貴重な仏像の数々を紹介するのが、今回の特別展です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
出展数は、18点(うち2点は期間中展示替えあり)。
そう聞いて少ないと感じた方もいらっしゃるでしょうが、
18点のうち、なんと15点が国宝か重要文化財に指定されています。
そう、量より質の展覧会なのです!
展覧会の目玉は何と言っても、
浄瑠璃寺の《阿弥陀如来坐像》でしょう。
国宝《阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち)》 平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺
明治時代以来、およそ110年ぶりに修理されたばかり。
その修理したてホヤホヤの姿を拝観することができます。
なお、浄瑠璃寺では普段、9体の阿弥陀如来が、
横一列に並んでいますが、今回上京しているのは、そのうちの1体です。
そして、その両サイドをガードしているのは、
同じく浄瑠璃寺に安置されている四天王像のうち2体(どちらも国宝)。
お越し頂いた仏像をありがたく拝見しつつ、
居残り組(?)の仏像にも、想いを馳せてしまいました。
また、その向かいに展示されていたのは、
禅定寺の創建時からのご本尊《十一面観音菩薩立像》。
重要文化財 《十一面観音菩薩立像》 平安時代(10世紀) 京都・禅定寺
高さは、実に約3mの巨大な仏像です。
と言っても、いい意味で圧迫感はなし。
むしろ柔和な印象すら覚える仏像でした、
御顔立ちも優しげですが、水瓶の持ち方も優しげです。
ソフトタッチを通り越して、フェザータッチ。
もはや手に持っていないようにさえ見えました。
水晶玉が浮いて見えるジャグリング的な感じの。
なお、今回出展されていた仏像の中で、
個人的に一番印象に残っているのが、極楽寺の《阿弥陀如来立像》です。
重要文化財《阿弥陀如来立像》 鎌倉時代・嘉禄3年(1227) 行快作 京都・極楽寺
これまで数多くの仏像を目にしてきましたが、
これほどまでにニヒルな表情の仏像には初めて出会いました。
Vシネ顔、ビッグコミック顔です。
印象に残っているといえば、寿宝寺の《千手観音菩薩立像》も。
千手観音と言いつつも、千手観音は、
手は42本しかないのものがほとんどですが。
(1本=25本分という暗黙のルールがあるようです)
この寿宝寺のものは、ちゃんとほぼ1000本あるそうです。
それだけでもビックリですが、横から見てもう一回ビックリ。
片側で500本近くもあるのに、
省スペース化に成功(?)していました。
こんまり並の収納術です。
ちなみに。
そんな1000本の腕に目を奪われて、スルーしそうになったのですが、
その隣にいた《降三世明王立像》の足元もスゴいことになっていました。
踏みつけ方が、エグいって!
2体同時に踏みつけています。
しかも、1体は喉元を踏みつけられていました。
この他にも、胡坐をかいた足に布が巻き付いている薬師如来像や、
一般的には立像が多い十一面観音菩薩の坐像など、
珍しい仏像が多く展示されていました。
京都の中でもレアなエリアだけに、
南山城にはレアな仏像が多いのでしょう。
まだ知らない京都、まだ知らない仏像に出逢える展覧会でした。
最後に、もう1体印象的だった仏像をご紹介。
神童寺に伝わる重要文化財の《不動明王立像》です。
全体的に体形が、ぽちゃぽちゃしていました。
圧倒的中年感。
サウナでよく見かける感じです。
親近感を覚える方は、きっと少なくないはず。
┃会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)
┃会場:東京国立博物館本館特別5室
┃https://yamashiro-tokyo.exhn.jp/