小田急線読売ランド前駅から歩くこと10数分。
何の変哲もない住宅地のど真ん中に、
梅田スカイビルや京都駅ビルの設計で知られる建築家、
原広司さんによる伝説的な住宅建築があります。
その名は、粟津邸。
戦後日本を代表するグラフィックデザイナー・粟津潔の自宅兼アトリエです。
昨日の記事で紹介した展覧会でも、
ちょうど粟津邸の図面が展示されていましたし。
その存在は、もちろん知っていて、気になっていましたが、
なにぶん人様のお家なので、実際に訪れる機会は無いと思っていました。
が、なんと!
粟津潔の息子である粟津ケンさんによって、
この秋より、粟津邸がアートスペースに生まれ変わりました!
ということで、鑑賞料を払えば、
粟津邸の中に入ることができます。(開館日は土日祝)
しかも、外観は一部撮影禁止でですが、
館内は自由に写真撮影することが可能です。
1972年に建てられたとは思えない、
斬新な住宅建築を存分に楽しむことができます。
さて、アートスペースに生まれ変わった、
“シン・粟津邸”のオープニングを飾るのは、
“吉國元展 根拠地―粟津邸ではじまる”という展覧会。
ジンバブエ生まれのアーティストで、
VOCA展2021にも選出された吉國元さん(1986~)の個展です。
吉國さんは、10歳まで過ごした記憶の中のジンバブエと、
現在、日本で暮らすアフリカ人を取材し、その両方を描き続けているそう。
吉國さんがこれまでに描いた作品が、
粟津邸内のいたるところに展示されています。
かつて寝室だったスペースや、
キッチンだったスペースも例外ではなく、
吉國さんの作品が展示されていました。
まるで人様の家に勝手に入っているようで、
というか、実際に人様の家であったスペースなので、
妙なドキドキ感を味わいながらの鑑賞となりました(笑)。
粟津邸と吉國元さん。
正直なところ、展覧会を観るまでは、
何の接点もないような印象がありましたが。
粟津邸の開放的な雰囲気と、
ジンバブエの空気感が、不思議とマッチしていたような。
一瞬、窓から見えるお庭の景色が、
吉國さんの絵画作品に思えてしまったほど。
普通のギャラリーで観るのとは全然違う、貴重な鑑賞体験でした。
ちなみに。
粟津邸の一角にある茶室スペースでは・・・・・
メキシコの版画運動から生まれた木版画、
「メキシコの黒人ディアスポラシリーズ」より、が特別展示されていました。
ジンバブエに、メキシコに、
ちょっとした海外旅行気分が味わえます。
なお、お庭の一角には、
粟津潔によるブロンズ彫刻、
《コスモの母子像》が設置されていました。
完全にサンオイルを塗ってもらうポーズ(←?)。
ちょっとしたリゾート気分も味わえます。