やまと絵展に、ローマ展に、モネ展に、ゴッホと静物画展に。
例年以上に、大型展覧会が開催されている2023年の芸術の秋。
そんな中、それらにも引けを取らない大型展覧会が根津美術館で開催されています。
それが、“北宋書画精華”。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
キャッチコピーは、『きっと伝説になる』。
控えめに言っていますが、
確かに、伝説になる展覧会だと思います。
中国書画史において頂点の一つといえる宋時代。
その中でも“東洋のルネサンス”とも称されているのが、北宋時代(960~1127)。
そんな北宋時代に焦点を当てた日本初の展覧会です。
京都の高桐院が所蔵する国宝の《山水図》や、
藤井斉成会有鄰館が所蔵する重要文化財の《秋山蕭寺図巻》を筆頭に、
重要文化財 (伝)許道寧《秋山蕭寺図巻》 中国・北宋時代 11世紀 京都・藤井斉成会有鄰館蔵
国内にある北宋時代の書画の名品が大集結しています。
古くから北宋時代の書画は、特に関西で大切にされてきました。
それらが関東で観られるというのも特筆すべきポイント。
色味こそ地味に映るかもしれませんが、
北宋時代のスターたちが初めて顔を揃えた超絶貴重な展覧会です。
どの作品も主役級なのですが、
その中でも特に見逃せないのが、こちらの《五馬図巻》。
重要美術品 李公麟《五馬図巻》 中国・北宋時代 11世紀 東京国立博物館蔵
中国・北宋時代を代表する文人画家、
李公麟(りこうりん)の数少ない真筆の一つで、
当時から「神品」として称賛されていた作品です。
中国の歴代皇帝に代々伝わってきましたが、
昭和の初期に日本へと渡ってくるも、第二次世界大戦中に行方不明に。
長らく、焼失したとも思われていましたが、
2019年に約80年ぶりに再発見後初展示され、大いに話題になりました。
なお、現在は東京国立博物館の所蔵となっています。
重要美術品 李公麟《五馬図巻》(部分) 中国・北宋時代 11世紀 東京国立博物館蔵
《五馬図巻》の魅力はなんといっても、圧倒的な描写力。
どの馬も、いかにも名馬というような筋肉をしています。
この幻の《五馬図巻》が観られるだけでも、とても貴重なのですが、
本展ではさらに、メトロポリタン美術館から李公麟の《孝経図巻》も来日しています。
李公麟《孝経図巻》(部分) 中国・北宋時代 元豊8年(1085)頃 メトロポリタン美術館蔵
実は、《五馬図巻》と《孝経図巻》はともに、
元の時代、とあるコレクターに所蔵されていたそう。
それから2つの作品は離れ離れになり、
本展でなんと約700年ぶりの対面を果たしているのだとか。
これは見逃し厳禁!
会期は1か月と短いので、今すぐにでも根津美術館へ!
ただし、オンライン日時指定予約制なので、それをお忘れなく。
ちなみに。
展示室5では、北宋時代の書の名品が勢ぞろい。
その中に、「宋四大家」の一人に数えられる、
黄庭堅(こうていけん)の貴重な書も3点含まれています。
こちらは、そのうちの一つ、《草書李太白憶旧遊詩巻》。
黄庭堅《草書李太白憶旧遊詩巻》 中国・北宋時代 紹聖元年(1094)以後 藤井斉成会有鄰館蔵
この暴れに暴れた字体は、「狂草体」と呼ばれているそうです。
正直なところ、何と書かれているのか、
まったくもってわからなかったのですが。
黄庭堅《草書李太白憶旧遊詩巻》(部分) 中国・北宋時代 紹聖元年(1094)以後 藤井斉成会有鄰館蔵
途中に『激太り』って書いてあるのだけわかりました(←絶対違う)。
それから、中国で制作されたものではないですが、
国宝の《古今和歌集序(巻子本)》も出展されていました。
国宝《古今和歌集序(巻子本)》 日本・平安時代 11~12世紀 大倉集古館蔵
実は、この豪華な紙自体は、
北宋で制作されたものなのだそう。
わざわざ中国から輸入した高価な紙の上に、
一発本番で奇麗な文字を書かないといけないだなんて。
「THE FIRST TAKE」よりも緊張感があったのでしょうね。
最後に、個人的にもっとも印象に残った作品をご紹介。
白鶴美術館が所蔵するこちらの《千手千眼観音菩薩像》です。
《千手千眼観音菩薩像》 中国・五代 10世紀 兵庫・白鶴美術館蔵
右下に描かれている人物が・・・・・
《千手千眼観音菩薩像》(部分) 中国・五代 10世紀 兵庫・白鶴美術館蔵
どうにも志村けんにしか見えませんでした。
ケンちゃんラーメンのCMの時の。
┃会期:2023年11月3日(金・祝)~ 12月3日(日)
┃※オンライン日時予約制
┃会場:根津美術館
┃https://www.nezu-muse.or.jp/