現在、千葉市美術館で開催されているのは、
“new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった”という展覧会。
“絵本界のノーベル賞”ともいわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を、
2005年に日本人として初めて受賞した荒井良二さん(1956~)の大規模展覧会です。
↑ちなみに。
会場の入り口前に飾られていたこちらの絵は、
荒井良二さんが、この場で描きおろしたものとのこと。
勢い余ったのでしょうか?
よく見ると、一部がカンバスをはみ出していました。
さてさて、展覧会ではもちろん、
荒井良二さんの代表的な絵本、
その原画の数々が紹介されています。
それらの中には、『あさになったので まどをあけますよ』や、
『きょうはそらにまるいつき』といった近作最新作も多く含まれていました。
絵本好き、絵本ファン垂涎の展覧会といえましょう。
とはいえ、正確に言えば、
荒井良二さんは、ただの「絵本をつくる人」ではありません!
ご本人曰く、「絵本もつくる人」。
ということで、絵本の原画以外のものも展示されています。
というか、展示されているもの大半が、絵本の原画以外のものです。
例えば、これまでにイラストで関わったワークスの数々。
それらの中には、今は無き雑誌、
『Olive』の星占いページのためのイラストもありました。
ちなみに。
個人的には、荒井さんのイラストよりも、
「元気にクリア!恋の障害。」という特集タイトルが気になりました。
恋の障害って、そんなにポップにクリアできるものなのでしょうか??
バックナンバーを手に入れる機会があれば、是非読んでみたいと思います。
と、話を元に戻しまして。
また例えば、こんな展示空間もありました。
「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」で、
芸術監督を3期にわたって務めたという荒井さん。
こちらは、その際に展開した作品を、
インスタレーション作品として再構成したものです。
特にこれといった説明はないので、
具体的に何なのか、わかりませんでした。
が、しかし、わからないけれども、
なんかワクワクする、なんか心がじんわりする、
そんなインスタレーション作品でした。
まるで、海外の絵本を読んでいるような。
しかも、その絵本の世界に入り込んでいるような。
なお、インスタレーション作品といえば、
本展のための新作も発表されていました。
その名も、《new born 旅する名前のない家たちを
ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》。
床に直置きされた立体物1つ1つが、
子どもたちのための家になっているのだとか。
しかも、ただの家ではなくて、“逃げる”ための家なのだそう。
一般的に、“逃げる”というのはネガティブな印象がありますが、
荒井さん自身は、むしろ“逃げる”をポジティブな印象で捉えているようで。
子供たちが今いる場所や環境から、幸福に向かって逃げる。
そんなイメージで制作されたそうです。
逃げるは恥でもなく役に立つ。
そんなメッセージが伝わってくるようでした。