東京都写真美術館にて、2002年より毎年開催されている“日本の新進作家”展。
写真・映像の可能性に挑戦する新進作家を発掘し、紹介する展覧会です。
その記念すべき20回目となる展覧会“見るまえに跳べ”が、現在開催されています。
ちなみに。
タイトルに採用されている「食べる前に飲む」みたいなフレーズは、
20世紀最大の詩人の一人、W.H.オーデンの詩の一節とのことです。
さて、展示室に入ってまず目に飛び込んできたのは、
岐阜県出身の淵上裕太さんによるたくさんのポートレート。
渕上さんは、上野公園に強く惹きつけられるものがあり、
2016年より上野公園に通っては、日々、撮影を続けているのだそうです。
渕上さんほどではないですが、職業柄、
上野公園は週1くらいのペースで訪れていますので、
“あぁ、こういう人いるよね”というポートレートが多いのかなと思いきや・・・・・
まったくもって、そんなことはありませんでした!
こういうご時世ですので、言葉を慎重に選びますが、
被写体となっている方はもれなく、まぁ・・・その・・・個性的な方ばかり。
こんな感じの人って、上野公園にいましたっけ??
渕上さんに、引き寄せる能力があるのか。
はたまた、僕が普段気づいていないだけなのか。
パラレルワールドの上野公園を見ている感じでした。
続いて紹介されていたのは、中国出身の夢無子(むむこ)さん。
彼女は、これまでに世界60カ国以上をスーツケースひとつで放浪したのだそう。
そんな夢無子さんは昨年、「戦争を見たい」とウクライナを旅したのだとか。
その旅のさなかで撮影した写真や映像、
彼女がつづった日記の言葉が、会場に投影されています。
内容はとても緊迫感があって生々しいのですが・・・・・
結婚式という不思議な設定で紹介されているため、
不思議な可笑しみ、不思議なポップさも感じられました。
良くも悪くも、どういう感情で観ていいのかわからない作品です(笑)
3人目に紹介されていたのは、山上新平さん。
前半の2人の作風があまりに強烈だったため、
山上さんの写真の静謐さが際立っていました。
2人に比べて個性は控えめ・・・・・と、思いきや。
作品としばらく向き合っていると、
写真に込められた山上さんの視線のようなものが感じられてきました。
それも、執拗なくらいに、じ~~~~~っと対象を見つめているような視線。
全然、個性は控えめでなかったです。
お次に紹介されていたのは、星玄人さん。
星さんは子どもの頃より、新宿や横浜といった、
夜の街を徘徊して、写真を撮影し続けているそうです。
こちらは、大阪の西成に通って撮影したシリーズ。
堂々と裸になっている男性や、
曲芸のようなバランスで4人乗りするお母さんなど、
衝撃的な光景が映し出された写真が多々あります。
一体、この中だけで、いくつの軽犯罪が写し出されているのか。
こちらはギリギリ大丈夫な気がしますが、村●隆さん的な絵も発見してしまいました。
なお、個人的に一番印象に残ったのは、こちらの一枚。
お店の名前が、『酔う』って!
しかも、お母さんが羽織っているのは、モルツのスタジャンです。
どんだけ酔う気満々やねん。
さてさて、展覧会のラストを飾るのは、うつゆみこさんです。
今年の春にとある展覧会で彼女の作品に出逢って以来、
ネットでTシャツを即買いしてしまうほど、その世界観に惹きつけられています。
そんなうつさんの大ファンの僕でさえ、
ちょっとウッとなってしまうほど、うつワールド全開の空間でした(笑)
1点1点でもパンチが効いているのに、
それが、膨大な数の作品が展示されていますので。
観れば観るほど、うつさんの脳内がどうなっているのか気になります。
ちなみに。
CGに思えるかもしれませんが、すべて実写です。
そんなわけない背景は、こういう柄の布なのだとか。
うつさんの作品に使われる以外に、
どういう需要があって、こんな柄の布が作られたのか。
うつさんの脳内と同じくらい、それも気になります。
観終わった後は、いい意味でぐったりしました。
いやはや、5人とも個性が強かったです。
5つの奇妙な世界をオムニバスで体験できる展覧会。
『世にも奇妙な物語』のような展覧会です。