現在、アーティゾン美術館で開催されているのは、
“マリー・ローランサン ―時代をうつす眼”という展覧会。
20世紀前半に活躍した女性画家マリー・ローランサンにスポットを当てた展覧会です。
マリー・ローランサンの展覧会といえば、
今年の春に、Bunkamuraザ・ミュージアムでも開催されていましたが。
本展はそれとはまったくの別物。
国内外の美術館から集めた約40点のローランサン作品を中心に、
関連資料や同時代の画家たちの作品と併せて、彼女の画業を紹介するものです。
貸出先の美術館の中には、
パリ市立近代美術館やオランジュリー美術館、
テート美術館、ストックホルム近代美術館の名前も。
ぶっちゃけ、マリー・ローランサン展は、
Bunkamuraザ・ミュージアムで観たから、
こっちはいいかな・・・と思っていましたが。
いやいや、見逃さなくて良かったです!
これほど密度の濃いマリー・ローランサン展は、
今後再び日本で実現するのは難しい気がします。
さて、展覧会の冒頭は、ローランサンの自画像がお出迎え。
いわゆるローランサンらしさが、まだ無い頃の初期の自画像です。
いわゆるローランサンの作風は、
歌手で言えば(←?)、カヒミ・カリィっぽい印象ですが。
この頃のローランサンは、UAっぽい印象を受けました。
その後、ある時を境に、自画像の雰囲気がガラッと変化します。
その理由は、ピカソやブラックといった、
キュビスムの作家たちとの出会いにありました。
本展では、キュビスム時代のローランサンの作品の数々も紹介。
併せて、同時代のキュビストたちの作品も紹介されています。
観比べてみると、その違いは歴然。
他のキュビストたちは、人物すらも解体しているのに対して、
ローランサンは、背景の木々や家などはキュビスム風にするものの、
人体に関しては、ほぼ原形を留めた姿で描いています。
彼女はその生涯を通して、人物像を多く描きましたが、
そのスタイルは、キュビスムの時代から一貫していたのですね。
なお、キュビスムの作品以外にも、
ローランサンが描いた静物画や挿絵の数々、
さらには、背もたれ部分を担当した椅子も紹介されており、
ローランサンの活動の幅の広さを実感できる内容となっています。
ちなみに。
そんなローランサンが、日本で初めて紹介されたのは、
今から約100年前の1914年(大正3年)のことだったそう。
日比谷美術館での“DER STURM 木版画展覧会”に作品が出品されました。
意外にも、日本デビューは木版画だったのですね。
では、いわゆるローランサンの作風の絵画は、
いつ頃、日本で初めて紹介されたのでしょうか?
一説によれば、1920年代には、日本に持ち込まれていたとのこと。
確実に判明しているのは、1925年(大正14年)に、
日本橋の三越呉服店で開催された“仏国現代大家新作画展覧会”で、
その出品目録には、「ローランサン夫人」の名前が記載されています。
この時に、《友》の名前で出展されていた作品が、
現在、アーティゾン美術館が所蔵する《二人の少女》なのだとか。
この作品に、そんな過去があったとは!
今まではサラッと観ていましたが、
これからは、もう少し有難がって観るようにしたいと思います。
さてさて、現在、アーティゾン美術館では、
マリー・ローランサン展と同時開催する形で、
今年6月にお亡くなりになった野見山暁治の特集が組まれています。
出展されている7点のうち、
3点が近年収蔵されたものなのだそう。
その3点はすべて今回が初公開となっています。
初公開の新収蔵品と言えば、こちらの作品も。
パウル・クレーの《双子》です。
パッと見、ぷっちょかと思いました。