87歳を迎えた現在もなお、現役で活躍する、
“美術界の生けるレジェンド”田名網敬一さん。
来年2024年には、国立新美術館にて、
世界初となる大規模回顧展が控えている、
まさに、今もっとも脂が乗っているアーティストです。
そんな田名網さんの最新個展が、
現在、プラダ青山店で開催されています。
その名も、“パラヴェンティ:田名網敬一”。
会期は、来年1月29日まで。
「パラヴェンティ」とは、イタリア語で「屏風」の意味。
家具でありながら、美術品として日常空間を変容させる。
そんな屏風に着目した展覧会となっています。
まず紹介されていたのが、こちらの屏風です↓
田名網さんの作品にしては、だいぶ地味。
しばらく見ないうちに、作風が変わってしまった?
一気に、老け込んでしまった??
・・・・・と一瞬、本気で心配になりましたが、
どうやらこちらは、室町時代に描かれた屏風とのこと。
式部輝忠なる水墨画家による《梅竹叭々鳥図屏風》です。
もちろん、本物。
ガラスやアクリルケース無しの剥き出しの状態で展示されていますが、本物です。
根津美術館に展示されていたら、特に何とも思わないでしょうが。
そこから少し離れたプラダ青山店の店内で、
まさか室町時代の屏風の本物が観られるとは!!
あまりにも想像していなかった展開すぎて、思わず笑ってしまったほど。
この体験ができただけでも、訪れた価値は大いにありました。
とはいえ、もちろんメインは、田名網さんの作品です。
こちらは、新作となる《記憶は嘘をつく》。
田名網ワールド全開。
らしさフルスロットルな作品です。
画面全体を、田名網作品お馴染みのモチーフや、
日本やアメリカを代表する漫画やキャラクターなどが埋め尽くしています。
余白の「よ」の字もない作品。
ただ、不思議と圧迫感のようなものはありません。
それぞれのモチーフが引き立つように、
絶妙なバランス感覚、編集感覚で配置されています。
渋谷の路地とかで見かけるよくわからんシールがバーッと貼ってある。
あんな感じでは、決してありません。
なお、会場で配布されるQRコードを読み込めば、
プラダのアンバサダーである坂口健太郎さんによるオーディオガイドと、
田名網さん本人による解説を聴くことが可能となっています。
本展で初めて本格的に屏風に挑んだという田名網さん曰く、
「屏風が興味深い点は、どの角度から見ても、
その全体を見わたすことができないという点にある。
常に見えない部分が存在しているものの、その存在は感じることができる。」とのこと。
確かに、見えていない死角の部分で、
モチーフたちがモゾモゾと動いていそうな不思議な感覚を味わいました。
なお、その隣に展示されていたのは、
2021年に発表された《赤い陰影》という作品。
こちらの作品は、《記憶は嘘をつく》以上に、
モゾモゾと動いているように見えるなァと思ったら、
デジタルアニメーション作品でした。
アンリ・ルソーやダリ、若冲など、
美術界のさまざまなアイコンが、田名網さん流に解釈されています。
田名網さんが名画を観る時には、きっとこういう風に見えているのでしょうね。
ちょっとうらやましくなると同時に、ちょっと心配になりました(笑)。
ちなみに。
展覧会では、田名網さんによる立体作品も展示されています。
タイトルは、《人間編成の夢(ブロンズ)》。
一瞬、今流行りの(?)トコジラミかなと思いましたが、
子ども時代に体験した戦争の記憶をコラージュして制作したものなのだそうです。
戦争とはかくも禍々しいものなのですね。
トラウマを具現化したかのような作品。
問答無用で駆除したくなる作品でした。
(↑もちろん実際は指一本触れていません!)