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北斎サムライ画伝

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これまでに、「花」や「鳥」、「山」、「笑い」といった切り口で、

北斎とその門人たちの作品を紹介してきたすみだ北斎美術館

その最新展となる“北斎サムライ画伝”のテーマは、「サムライ」です。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

武者絵と言えば、歌川国芳が得意とした印象があるものの、

正直なところ、「北斎=サムライの絵」という印象はありませんでした。

しかし、改めて観てみると、「冨嶽三十六景」シリーズをはじめ、

北斎が描いた浮世絵の数々に、サムライがちゃんと描かれていました。

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 東都駿台》(前期展示) すみだ北斎美術館蔵

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 従千住花街眺望ノ不二》(※半期で同タイトルの作品に展示替え) 

吉野石膏コレクション(すみだ北斎美術館寄託)

 

 

さらに、北斎は、国芳にも引けを取らない、

迫力のある武者絵の数々も描いていたようです。

 

葛飾北斎《鎌倉の権五郎景政 鳥の海弥三郎保則》(前期展示) すみだ北斎美術館蔵

 

 

また、北斎は、勇ましい武者絵以外にも、

『北斎漫画』内でユーモラスなサムライの姿を描いています。

 

葛飾北斎『北斎漫画』九編 士卒英気養図(通期展示) すみだ北斎美術館蔵

 

 

ぽっちゃりしていますが、彼はれっきとしたサムライとのこと。

しかも、これらは戦場へと向かう準備の様子を描いたものなのだとか。

いやいや、もっと緊張感持てよ。

てか、まずは服着ろよ。

 

また、『北斎漫画』と同じく、

北斎による絵手本である『画本早引』にも、

可愛らしいサムライの姿が描かれています。

 

葛飾北斎『画本早引』二編 切腹(通期展示) すみだ北斎美術館蔵

 

 

そのサムライが登場するのは、「せ」のページ。

仙人や節分など、「せ」で始まる言葉の絵が、

いろいろと描かれている中に、そのサムライはいます。

 

 

 

ミニサイズで描かれていることもあって、

切腹しているのに、妙な愛らしさがありました。

日本一、いや、世界一カワイイ切腹の絵ではないでしょうか。

 

 

さてさて、本展では、サムライが描かれた絵だけでなく、

すみだ北斎美術館のご近所さんでもある刀剣博物館全面協力のもと、

「サムライの象徴」とも言うべき刀剣(もちろん本物!)も展示されています。

 

重要文化財「太刀 銘 信房作」(通期展示) 刀剣博物館蔵

 

 

中でも見逃せないのが、こちらの取り合わせです。

 

 

 

“The Great Wave”こと《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》と、

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》((※半期で同タイトルの作品に展示替え)) すみだ北斎美術館蔵

 

 

押し寄せる波のような形状をした刃文「濤瀾刃」を生み出した、

大阪新刀屈指の巨匠とされる津田越前守助広の刀が併せて展示されています。

 

「刀 銘 津田越前守助広/延宝九年八月日」(通期展示) 刀剣博物館蔵

 

 

海外の人にも大人気の「葛飾北斎」と「刀剣」の2大コンテンツが、

こうして並べた形で展示される機会は、これまでに無かったような。

少なくとも、僕は初めて目にしました。

葛飾北斎と刀剣は、「波」繋がり。

そこに気が付く着眼点に、感服です。

星星

 

 

ちなみに。

《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》と、

津田越前守助広の刀の競演は、本当に素晴らしかったのですが。

展覧会の最後に展示されていた作品が、

パンチが効いていたため、記憶が上書きされてしまいました(笑)。

その作品というのが、こちらの北斎の門人である魚屋北溪が描いた摺物です。

 

魚屋北溪《つれ/\艸 筑紫に何かしの押領使なといふやうなるものゝ有けるか土おほねを 万にいみしきくすりとて》(前期展示)

すみだ北斎美術館蔵

 

 

鎧と巨大な大根。

シュールにもほどがある取り合わせです。

この元ネタとなった話が、『徒然草』に収録されているのだそう。

ある男が薬効を信じて、毎日2本の大根を焼いて食べていました。

その男の館が敵に攻められた時、

どこからともなく2人の兵士が現れて、

ピンチから助けれてくれたのだとか。

その2人の兵士の正体こそが、

毎日食べていた2本の大根だったそうです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

なんだそれ!

大根を食べていたおかげで、

身体が丈夫になったとかって話じゃないのかよ!

薬効ってそういうことだろ。

大根の精みたいなのが出てきて、どうすんだよ。

そんなこと言い始めたら、毎日、お米を食べてるけど、

いまだ一度もお米の精みたいなのに出会ったことないですけど?

絵柄以上に、話の内容がシュールでした。

できれば、この作品を展覧会のラストに持ってきてほしくなかったです(笑)

 

そうそう、ラストと言えば、こんな作品も。

葛飾北雲による 『奇伝新話 一名 五人振袖』です。

 

葛飾北雲 『奇伝新話 一名 五人振袖』巻之陸(通期展示) すみだ北斎美術館蔵

 

 

紹介されていたのは、主人公が無事に敵討ちを果たした場面。

よく見ると、「目出たくかしく」とか「よしよし」とか、

刀で斬られた敵から噴き出す血が文字になっています。

クライマックスの見せ場なのに、なんとも雑なユーモア演出!

ちょっと冷めました。

 

 

 

 

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