現在、板橋区立美術館で開催されているのは、
毎年恒例の入館料無料&写真撮影OKの館蔵品展です。
しかし、今年の館蔵品展とは、
これまでのものとはちょっと違ったテイストになっています。
その名も、“展覧会のちょっといい話 絵本と近代美術のあれこれ”。
板橋区立美術館が所蔵する作品の数々を、
とっておきの“ちょっといい”エピソードとともに紹介する展覧会です。
まず紹介されていたのは、
板美コレクションの柱のうちの1つ、近代美術のコレクション。
それらが、“ちょっといい”エピソードとともに紹介されていました。
例えば、池袋モンパルナスの中心メンバーの一人、
洋画家の井上長三郎と、その妻である井上照子(旧姓・長尾)。
その作品とともに展示されていたパネルでは、
こんな“ちょっといい話”が紹介されています。
作品だけでは、作家の人となりは見えてきませんが、
こうしたエピソードが添えられると、途端に親しみが湧いてきました。
特に池袋モンパルナスの作家の作品は、
なんとなく、暗くて重たい印象を抱かれがち。
それゆえ、こうしたほっこりエピソードを知ったうえで、
改めて作品を観てみると、ギャップ萌えすること請け合いです。
ちなみに、一応お知らせしておきますと、
学芸員Hさんの似顔絵は、ちょっとどころか、めちゃ似ています。
また、「日本のダリ」とも称された古沢岩美。
彼に関する“ちょっといい話”は、
生前に本人と深い交流のあった学芸員Mさんが披露していました。
こちらも一応お知らせしておきますと、
学芸員Mさんの似顔絵も、めちゃ似ています。
続いて紹介されていたのは、絵本に関するコレクション。
視覚障害のある子どもたち向けに作られた「さわる絵本」の数々や、
2021年のポール・コックス展の際に制作された体験型作品などが展示されています。
さらに、2017年に板美で開催された際には、
行列が絶えなかったほど大きな反響を呼んだ伝説の展覧会、
“世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦”。
本展ではそれ以来ぶりに、タラブックスの絵本が一挙展示されています。
さらに、2017年以降に収蔵された、
最新のタラブックスの絵本も展示されています。
タラブックスファン、絵本ファンであれば必見!
2017年にタラブックス展の時と違って、
今のところ行列は出来ていないようなので、
ゆったりとタラブックスワールドに浸れるチャンスですよ。
また、意外なところでは、後半生を板橋区で過ごした童画家で、
そもそも「童画」という言葉を生んだ武井武雄の刊本作品も展示されていました。
刊本作品とは、武井武雄の究極のライフワークともいうべきもの。
武井が物語や絵を描き、さらに、装丁に至るまでトータルで手掛けた小型絵本です。
1935年から亡くなる1983年までの約50年間に、139作が制作されました。
その装丁のこだわりは並々ならぬものがあり、
本ごとに技法や素材をすべてを変えているほどです。
中には、普通の本には用いられない、
螺鈿や印伝といった伝統工芸を使用したものも!
その芸術性の高さから、“本の宝石”とも呼ばれているのも納得です。
なお、これらはすべて市販されたものではありません。
およそ300部限定発行で、
「親類」と呼ばれる会員にのみ、実費で頒布されました。
「親類」になれなかったけど、キャンセル待ちしてでも欲しい。
そういう人々たちで結成された「我慢会」なるものもあったそうです。
それだけ人気があるなら、転売ヤーとか出てくるのでは?
と思ったら、もし、転売が発覚したら、
「親類」の権利がはく奪されるという罰則が設けられていたそう。
日本で初めて転売ヤー対策した人間は、武井武雄だったのかもしれません。
ちなみに。
今回の館蔵品展では他にも、
「板橋美術懇談会」にもスポットが当てられていました。
通称、ハンビコン(板・美・懇)。
1980年代後半に、板美に勤務していた学芸員さんを中心に、
板橋区在住の美術評論家や芸術家、美術雑誌の編集者などが、
下赤塚にあった民謡酒場に集まって、芸術談議に花を咲かせていたそうです。
そんなハンビコンに参加していた深井隆さんと丸山常生さんの作品も展示されていました。
丸山さんの作品を何気なく見ていたら、
車のナンバープレートが張り付けられていました。
ご本人のものかと思いきや、
学芸員Mさん曰く、丸山さんが拾ったものとのこと。
このナンバープレートに心当たりのある方は、板美まで(←?)。