昨年度に開催された“ドリーム/ランド”に続き、
今年も神奈川県民ホールにて、展覧会が開催されています。
その名も、“味/処”。
味のある空間で 味のある作家の 味のある作品を 味わう。
そんな展覧会とのことです。
参加作家は、全6名。
まず初めに紹介されていたのは、
アーティストのさとうくみ子さんの作品です。
近年の日清のCMをどこか彷彿とさせるような。
カオスな世界が方眼紙に描かれていました。
キャプションを見ると、これらはすべて、
《「○○」のためのドローイング》となっています。
つまり、これらを基にした本作品があるというわけです。
一体どんな仕上がりになっているのか?
次の展示スペースに進むと、思いもよらぬ光景が待ち受けていました。
あ、立体作品なんだ!
しかも、段ボールや木材などを組み合わせて制作されています。
ドローイングの時点で、だいぶカオスでしたが、
立体作品になっても、そのカオスっぷりは健在です。
なんかよくわからない物体やキャラが、あちらこちらに見受けられます。
ただ、世界観がカオスではあるものの、
作りはカオスではなく、むしろ几帳面な印象。
細部にまでこだわり、神経質なまでに丁寧に作られていました。
さとうさんにはこれからも、この独自路線を貫いて頂きたいものです。
続いて、紹介されていたのは、映像作家の倉知朋之介さん。
複数の映像からなるインスタレーション作品です。
おそらく、この人が倉知朋之介本人。
おそらく、『古畑任三郎』のオープニングのパロディと思われます。
こちらは、2分ほどの映像ですが、
終始、変顔と変なポーズを取り続けていました。
ハリウッドザコシショウの下位互換といったところでしょうか。
別の映像でも彼がだいたい登場するのですが・・・・・
そのつど変顔を決めていました。
美術作品を観ていて、こんなにも腹が立ったのは初めてです(笑)。
ただ、腹は立つのですが、
しばらく観ていると、不思議なもので、
この味わいが妙に病みつきになってきます。
気づけば、ちょっとお代わりしたくなっている自分がいました。
さて、展覧会では他にも、澤田華さんによる、
モニターやプロジェクターを用いたインスタレーション作品や、
主にフレスコ画で制作を続ける川田知志さんの作品群、
見慣れた光景を木材やベニヤ板で再現する、
丸山のどかさんによるインスタレーションが紹介されていましたが。
個人的に一番グッと来たアーティストは、今村遼佑さんです。
ホールの巨大な吹き抜け空間に、
今村さんの繊細な作品の数々が、点在していました。
例えば、バケツを覗き込むと、そこに映像が流れていたり。
また例えば、何気なく置かれていた雑巾のごく一部が点滅を繰り返していたり。
決して派手さはないものの、
心の奥がじんわりとするような、
繊細な味わいの作品が、随所に置かれていました。
中でも特にお気に入りなのが、《街灯と辞書》という作品。
タイトル通り、辞書の上に、
小さな街灯が立てられています。
ちなみに、街灯が照らしていた文字は、「現在」でした。
新しい作家を知ることができましたし、
作品も印象深いものがそれなりにあったのですが。
昨年の“ドリーム/ランド”同様に、
会場にキャプションが一切なかったのは残念。
ハンドアウトに記載されているのは、
作家名や作品名といった基本情報だけで、
どんな作家なのか、どんな作品なのかの説明は一切ありませんでした。
作家や作品について知れたら、もっと得るものがあっただろうに。
それもあって、結局のところ、
倉知さんの顔芸のインパクトだけが残る展覧会でした(笑)。