寺田倉庫株式会社が主催する現代アートのアウォード、
それが、TERRADA ART AWARDです。
応募条件は、「18歳以上45歳未満」 であること。
日本語でコミュニケーションさえ取れれば、国籍は関係なし。
発表する形式も、絵画や写真、映像などの平面作品に限定せず、
彫刻やインスタレーション、パフォーマンスや音楽でも現代アートであれば何でもありです。
ファイナリストに選ばれた5人には、
太っ腹にも、賞金として300万円が授与されます。
(注:ただし、ファイナリスト展での展示作品の制作にかかる費用はその300万円の中から捻出)
前回は、国内外1346組の応募があったのに対し、
今回はやや減少し、国内外より1025組の応募があったそう。
その中から厳選な審査を経て、見事ファイナリストに選ばれた5人の作品が現在、
寺田倉庫の“TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展”特設会場で展示されています。
ファイナリスト1人目は、金光男さん。
不安定な素材であるパラフィンワックス(=蝋)の上に、
シルクスクリーンプリントを応用して、イメージを定着させた後、
その表面をあえて熱で溶かし、イメージを融解させる。
そんな唯一無二の作風で注目を集めるアーティストです。
今回はそんな金さんの代名詞とも言うべき作品に加えて、
完全新作となる赤い蠟で出来た巨大なカヌーが展示されています。
実はこのカヌーの下には、金属製の板があります。
しかも、その板は熱源で温められています。
つまり、3週間の展示期間中に、
蝋がゆっくりと溶けていく仕様になっているのだとか。
当たり前ですが、1度溶けた蝋は元には戻りません。
こうしている間にも、刻一刻とカヌーは溶けています。
もしかしたら、3週間ももたないかも。
気になる方は早めに展示に行かれることをオススメいたします!
2人目のファイナリストは、村上慧さん。
ざっくり言ってしまえば、発泡スチロール製の家に住んでいるアーティストです。
今回は、発泡スチロール製のオブジェクトで構成されたインスタレーション作品を発表。
それぞれのオブジェクトには、小さなモニターが取り付けられており、
その画面に時々口元の映像が映し出されては、ウィスパーボイスで何やら話し出します。
・・・・・というような作品。
ある程度の時間、滞在できれば、
言わんとすることが伝わったのでしょうが、
数分では全容を把握するのは難しかったです。
3人目のファイナリストは、原田裕規さん。
2019年以降断続的にハワイに滞在し、
ハワイ移民の歴史をリサーチしているアーティストです。
ちなみに、2013年には、こんな本も出版されています。
そんな原田さんが、今展で発表しているのも、
やはりハワイ移民をテーマにした映像インスタレーション作品。
移民が経験したプロセスを、言語学習のシャドーイングによる「声の重なり」と、
自身の表情をデジタルヒューマンにトラッキングさせる「感情の重なり」によって再演する。
・・・・・とのこと。
知らない専門用語が登場しすぎて、
正直なところ、理解はできなかったのですが。
最新のテクノロジーが使われたアート作品であることだけはわかりました(笑)。
4人目のファイナリストは、今回の紅一点、冨安由真さん。
冨安さんといえば、誰もいないにも関わらず、
何かがいるような気配を感じさせる体験型作品でお馴染みのアーティスト。
昨年の夏、原爆の図丸木美術館で開催された個展が記憶に新しいところです。
今回発表されているのは、一室をまるまる使ったインスタレーション作品。
外観からして無機質な雰囲気が漂っています。
この扉を開けると、その先に待っていたのは・・・・・
壁一面に展示された絵画作品と、
全面を鏡で覆われた箱状の何やら。
あまりに大きいので、全体を写真で収めるのは困難です。
実は、この鏡は○○○○になっており、
しばらくして、空間内の××××が△△△△すると、
箱状の何やらの★★★★★★★★という仕掛けになっています。
(注:この作品の最大の見せ場なので、ネタバレしないよう伏字にしてみました)
これまでの冨安由真さんの作品にはたびたび、
アンティークの家具やアイテムが使われていましたが、
今回の新作には、一切そういったものが使われていません。
まさに、新境地といった印象。
冨安さんのファンなら必見です!
5人目のファイナリストは、メディアアーティストのやんツーさん。
森美術館で開催されていた六本木クロッシング2022展では、
Amazonの倉庫などで使われている自律搬送ロボットが、収蔵庫のような空間で
ひたすら展示品の搬出・搬入を繰り返すという作品を発表されていました。
今回の新作はそのパワーアップ版。
自律搬送ロボットが、美術品を搬出・搬入しながら、
お絵かきロボットやセグウェイと会話劇をするというもの。
約30分の完全オリジナル演劇作品です。
やんツーさんご本人もちらっと登場しますが、
基本的には、3体のロボットだけしか登場しません。
ロボットが人間の仕事を奪う日が来る、
とは、なんとなーく耳にしてはいましたが。
役者の仕事もロボットに奪われる時代になったのですね。
なお、この演劇は平日は1日1回17時~、土日は15~と17~の2回公演だけ。
公演していない時間は、ブルーシート製の幕でこの空間自体が覆われています。
この展覧会に行くのであれば、やんツーさんの作品はマスト!
是非、公演時間に合わせて訪れてくださいませ。
ちなみに。
入場料は無料となっています。
ファイナリストだけでなく、
美術ファンにも太っ腹な展覧会です。