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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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鈴木繁男展―手と眼の創作

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現在、日本民藝館で開催されているのは、

“鈴木繁男展―手と眼の創作”という展覧会です。

 

 

 

展覧会の主役は、鈴木繁男。

名前だけ聞くと、スタジオジブリのプロデューサーっぽいですが、さにあらず。

柳宗悦の唯一の内弟子だった人物です。

民芸運動を陰ながら支え続けていただけに、

これまでスポットライトが当たることはほとんどなかったようですが、

没後20年を経て、晴れて初となる大規模な回顧展が開催される運びとなりました!

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

ちなみに。

鈴木繁男が柳宗悦の内弟子となったのには、こんな経緯があったのだそう。

若き日の鈴木が、地元の静岡で、

木刀をもって素振りをしていたところ、

そこを通りかかった精神科医の式場隆三郎(※)に目に留まりました。

(※山下清や草間彌生さんの才能を見出した人物)

なんでも、鈴木少年が手にしていた木刀に彫り込まれた文様に惹かれたのだとか。

その模様は、鈴木少年が自分で彫り込んだもの。

光る才能を感じた式場は、友人だった柳に鈴木少年の存在を伝えます。

興味を持った柳は、鈴木繁男にラブコール。

鈴木繫男も著書を通じて柳を敬愛していたため、

高校卒業とともに上京し、住み込みで弟子入りすることとなったそうです。

なお、残念ながら、そのきっかけとなった木刀は、

所在がわかっていなそうで、本展には出展されていません。

人生を大きく変えるほどの文様とはどんなものだったのか、非常に気になるところです。

 

 

さてさて、鈴木繫男が初めて注目を浴びたのは、

柳宗悦が発刊した雑誌『工藝』の装幀の仕事でした。

 

 

 

↑どこかスリップウェアを彷彿とさせる、

民藝らしい印象のデザインが取り入れられた表紙です。

それだけでは特に驚くほどではないですが、その素材感にご注目。

実はこちらは、漆で仕上げられた表紙なのです。

もちろん雑誌なので、1冊というわけはなく。

何十冊、何百冊と作る必要があります。

つまり、その分だけ手作業で作らねばならないのです。

いやはや、考えるだけで途方もない作業です。

 

そんな仕事を鈴木繫男は何号も、

雑誌『工藝』だけでなく、柳宗悦の著作の装幀でもこなしました。

 

 

 

師匠のために、大変な作業を黙々とこなす。

まさに、弟子の鑑です。

 

ちなみに。

 

 

 

日本民藝館の開館時から大事に使われている陳列ケースや展示台。

この拭漆塗りを行ったのも、若き日の鈴木繫男だったそうです。

没後20年も経ってしまいましたが、

真面目にコツコツと頑張っていた人が、

ちゃんとこうして展覧会という形で評価されるというのは、素晴らしいことですね。

努力は必ず誰かが観ていてくれる。

そんなことを学んだ展覧会でした。

星星

 

いや、もちろん生き様だけなく、

鈴木繫男の作品そのものも素晴らしかったです。

とりわけ素敵だったのが、鈴木繫男の陶芸作品。

ジャクソン・ポロックを彷彿とさせる斬新な作品もあれば、

 

 

 

北欧デザインっぽい(?)シンプルでオシャレな作品も多々ありました。



 

鈴木繫男はお酒を飲まない人だったのでしょうか。

酒器はほとんどなかったのですが、

代わりに、湯呑は多数展示されていました。

 

 

 

なお、個人的に一番印象に残っているのは、こちらのお皿。

 

 

 

渥美。もしくは、山下のために作られたお皿なのかもしれません。

あるいは、児玉という可能性も。

 

 

ちなみに。

個人的には、2階の第4室での併設展、

“絵馬と神祭具”もユルさ全開でツボでした。

 

 

 

願いを込めた本人的には、切実なのでしょうが、

絵のタッチがあまりにもほのぼのとしているので、そのギャップが・・・(笑)

中でも特にインパクトがあったのが、下半身だけが描かれた絵馬。

 

 

 

足が長くなりますように。

足が細くなりますように。

足腰が強くなりますように。

そんな感じの願いが込められているのでしょう。

 

それと、もう一つインパクトがあったのが、こちらの絵馬。

 

 

 

“賭事絶ち”の絵馬だそうです。

神頼みしてないで、自分の意志でやめろよ。

「俺、今度こそギャンブルやめるわ」

「お前、そう言って、結局いつもギャンブルやってんじゃん」

「今回はマジだから!」

「いやいやいや、お前には無理!」

「無理じゃないって!絵馬も描いたし!」

「それでも無理だよ」

「何だと!じゃあ、ギャンブルやめれるか賭けようぜ!」

「ほら見ろ!そんな絵馬、捨てちゃえよ」

 

 

 

 

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